シャノン

Open App
12/12/2024, 12:45:16 PM

【心と心】


"彼"は、何か勘違いしている気がする。
確証があるわけではないけれど、
そんな気がしてならない。

私の力量が足りなかっただけだから、
責任を感じる必要なんてないのに。
そう言っても"彼"は、"自分"を責めているようだった。


私が、いつも"彼"に、迷惑ばかりかけているからだ。


知り合って3年目に入り、
他愛もないことや自分のことも話すようになって、
"彼"がどんな考え方をする人かを知って、
その頼もしさと優しさに甘えていた。

けどそのせいで、また迷惑をかけてしまった。
私のせいで、"彼"は、"自分自身"を責めている。


「大丈夫だよ。きっと全部、元通りになるさ。」
『うん。…そうだよね。』

あんなに近くにいたはずの"彼"との心の距離が、
ひどく、遠くに感じる。

12/11/2024, 10:31:00 AM

【何でもないフリ】


最近になって、やっとわかったことがある。
俺は"あいつ"の嘘に気付けなかったんだ。
それも、付き合いの長い同級生に言われて知った。

全く、気が付かなかった。
"こいつ "が笑いながら大丈夫だと言うのなら
大丈夫なんだろうと、そう思っていた。


俺は、"あいつ"のことを、何もわかっていなかった。


知り合って3年目に入り、
他愛もないことや自分のことも話すようになって、
"あいつ"がどんな考え方をする奴なのか、
わかったような気になっていた。

けどそれは、俺の思い上がりだった。
結局、肝心な部分までは、わかっていなかった。


「…そういう訳だ。早く戻って来いよ。」
『あぁ。…そうだな。』

何でもないフリが上手い"あの馬鹿"を、
これ以上、独りにはさせられない。

12/9/2024, 11:13:47 AM

【手を繋いで】


始めての登校日。
小学1年生だから、本当に始めて学校に行く日。
同じ登校班のお姉さんが、手を繋ぎながら
歩幅を合わせて歩いてくれた。

生憎の雨模様寒かったけど、
暖かかったあの手は、今でも覚えている。

12/8/2024, 12:54:52 PM

【ありがとう、ごめんね】


『お疲れ。コレ、今朝配られた分だ。置いとくぞ。』
「うん、ごめん、ありがと。」

これは、あいつの口癖みたいなものだ。
"ありがとう"には必ず"ごめん"が付いている。

『あのな…。前から言ってるけど、何で謝るんだよ。』
「えー、何でって言われても…。」
『何も悪いことはしてないんだから、いちいち謝るなよ。』
「んー。でも、手間掛けさせてるわけだし…。」
『これくらい、どうってことねぇよ。』

こいつは真面目で義理堅いやつだが、
頭も固いし聞き分けが悪い。
それに加えて、性分がそうさせているのだろう。
"ごめん"の回数が減ることはなかった。

知り合って間もない頃は、感謝の言葉と共に告げられる
謝罪の言葉が腑に落ちなかったし、
正直なところ、気に食わないとさえ思っていた。
しかし慣れとは恐ろしいもので、今では
それも"あいつらしさ"の1つだと思うようになっていた。

『それにしても、珍しいな。お前が遅れて来るなんて。』
「あぁ〜、まぁ、ちょっと…ね。」
『なんだ、何かあったんだろ?』
「そう、なんだけど…。」
『…言いにくいことか?』
「うん、ごめん。」
『いや、いいんだ。
ただ、無理はするなよ。俺も、出来るだけ力になる。』
「…。ありがとう、…ごめんね。」

そう言って力なく笑うこいつに、違和感を覚えた。

(何かを隠しているんじゃないか…?)

そんな予感がしながらも、追求はしなかった。
こいつの口は良くも悪くも固い。
無理に問い詰めても、また適当にはぐらかされるだろう。

(全く話をしないわけではないんだ。
必要があれば、その時に話してくれるだろう。)

そう呑気に考えていた。
…今は、そのことを後悔して止まない。

12/4/2024, 5:44:31 PM

【夢と現実】


嫌な夢を見た。

尊敬する、憧れの先輩から、
本物の先輩からは信じられないような、
そんな、酷い暴言をぶつけられた。
激しく罵られた。

夢の中の先輩は、知らない人なんじゃないかと、
別人なのではと思いたくなるほど、怖かった。

(今日、練習日だ…。)

夢は所詮、夢だ。
そうわかっていても、怖かった。

―――

あっという間に練習の時間が訪れる。

先輩はお仕事がお休みだったのか、
いつもより早い到着だった。
楽器を運びながら、先輩の背中に声をかける。

振り向いた先輩は、見慣れた笑顔を浮かべていた。
私が知っている、優しい声。
いつもと同じように、"重いだろ?"と言いながら、
楽器の運搬を手伝ってくれる。

(よかった。先輩は先輩だ。)

同級生にこの話をしたら、
"疲れているんじゃない?"とか
"先輩をなんだと思ってるんだ…"とか
"内容はどうあれ、ついに夢を見るようになったか"とか…。
心配してくれたり、いつも通りに軽口を
叩いてからかったり、反応は三者三様だった。

優しい先輩に愉快な友人たち。
彼らがいるこの現実が、私はたまらなく好きだ。

Next