【夢と現実】
嫌な夢を見た。
尊敬する、憧れの先輩から、
本物の先輩からは信じられないような、
そんな、酷い暴言をぶつけられた。
激しく罵られた。
夢の中の先輩は、知らない人なんじゃないかと、
別人なのではと思いたくなるほど、怖かった。
(今日、練習日だ…。)
夢は所詮、夢だ。
そうわかっていても、怖かった。
―――
あっという間に練習の時間が訪れる。
先輩はお仕事がお休みだったのか、
いつもより早い到着だった。
楽器を運びながら、先輩の背中に声をかける。
振り向いた先輩は、見慣れた笑顔を浮かべていた。
私が知っている、優しい声。
いつもと同じように、"重いだろ?"と言いながら、
楽器の運搬を手伝ってくれる。
(よかった。先輩は先輩だ。)
同級生にこの話をしたら、
"疲れているんじゃない?"とか
"先輩をなんだと思ってるんだ…"とか
"内容はどうあれ、ついに夢を見るようになったか"とか…。
心配してくれたり、いつも通りに軽口を
叩いてからかったり、反応は三者三様だった。
優しい先輩に愉快な友人たち。
彼らがいるこの現実が、私はたまらなく好きだ。
12/4/2024, 5:44:31 PM