鏡の中の俺は外へ出て遊びに行けないし、好きなように動くことも出来ない。
…なんか、理不尽だよなぁ
ま、元々鏡の中俺だった俺が言うことでもないか。
鏡の中の俺は馬鹿だったなぁ。
もう二度と変わってやらねぇけど
少し、話そ?
もう少しだけ。
僕は弱いから、まだ信じたいんだ。
ねぇまだあっちには逝かないよね?
毎晩怖くなるんだ。
明日には君が起きなくなるんじゃないかって、考えれば考えるほど辛くなる。
だから、少し、もう少しと君といれる時間をつくる。
君が眠りにつく前に
「ねぇ、風弥くん、だったよね。俺らってどんな関係だったの?」
「…っ、!」
聞いていた。分かっていた、つもりだった。
晴也が記憶喪失になったと、頭では分かっているんだ。でも、それでも、もしかしたら俺のことは覚えているんじゃないかって思っていた。
「俺らは…幼稚園からずっと仲良しな親友だよ」
「…そっ、かぁ、じゃあ改めてよろしく!」
「応、じゃあ俺そろそろ帰るわまた明日な」
「うん、また」
「っ、はぁぁぁっ…」
「改めてよろしく!」か、やっぱり、覚えてないんだろうなぁ。と嫌でも実感してしまう。
人の記憶は永遠じゃない。でも、やっぱり
「やっぱり…今じゃねぇだろ…っ」
…来るんじゃなかった。こんなところ。
⟬理想郷⟭なんて、響きが良くとも実際行くとなると地獄だ。もちろん初めは全て上手くいって楽しかったし、天国だった。ただ、だんだん何をしても許されるからか1人の仲間が壊れた。
――人を、殺したんだ―――
そこから俺たちの関係は崩れ、闇に手を染めた仲間も多く現れた。あぁ、もう終わりだと俺が悟った時くすっと笑い声が聞こえた。興味本位で声の方を除くと幼女が笑っていた。
「ねぇねぇおにーさん、人ってねー…」
―――簡単に壊れちゃうんだよぉ―――
なんだ?何を知っているんだ?
「っ…お前は、だ、れだ…」
「ねぇねぇおにーさん、快楽はお酒とタバコと一緒1回覚えたらほとんどの人は止められなくなっちゃうんだよ。おにーさんはそのほとんどに入らなかった人。おにーさん」
コノジゴク
―――あなたは、理想郷から逃げられる?―――
⟬懐かしく思うこと⟭
電車の音を聞くと、君と全てから逃げ出したことを思い出す。
あのころの俺たちはまだまだ子供で、弱かった。
「一緒に誰もいないどこか遠くへ行こう!」
なんて言えてしまうほどに現実も知らなかったね。
―ねぇ、そっちはどう?―
俺は今日も君がいない世界で生きてるよ。
あの後、君は僕を1人置いて逃げてしまったけど、今は幸せに生きているかな?
いつか見つけてあげるから、そしたらもう一度言わせて。
「一緒に誰もいないどこか遠くへ行こう」