千年前を生きた君は
千年後に僕に生まれ変わって
ときどき僕の心を支配する
そう考えると
辻褄の合うこともある
繰り返して
千年先にまた君に生まれ変わるであろう僕の
心を支配するのは君なのか
それとも僕なのか
今日というごちゃごちゃの旅の途中で
知らない誰かの淹れてくれたコーヒーが
最高の道連れになる日常
たまたま同じ車両に乗り合わせた人たちに
些細な理由で親しみを感じてしまう日常
空間の歪みをもろともせず
スマホとスマホが僕らを繋げる日常
記憶よりも早く上書きされていくシステムに
容易く打ちのめされる日常
その旅路の果てで僕らは眠る
次が始まるまでの休符、一個分
きみが僕に与えてくれるものは
計り知れない
だけどきみは神様ではない
浮かれたり落ち込んだりと
毎日忙しい小さなひとりの人
だから僕はきみを崇めたりしない
きみと目線を同じにして
きみの考えてることに耳を澄ます
聞こえてくるものは夢ではなく
悪夢でもなく
飾りのない本当の現実
「あなたに届けたい」
結露して磨りガラスのようになった
窓の外が青く染まっている
間違いなく晴れている
それも雲ひとつない完璧な空
起きたらすでに10時を回っていて
世界もすでに回っていた
とりあえず僕の
今いる位置を確認する
間違いなく自分の部屋
丸くなった猫の背中が
その証し
君がいることで
僕の世界は定まる
リセット完了
「優しさ」
誰かに会いにいく真夜中に
冬の星は密かに僕を讃える
だから僕は歩いて歩いて
次第にスピードを上げることができる
冷たかった感覚が少しずつ温まって
指先も足先もじんわりとしてくる
僕の周りは一面の静寂で
追い越していく車に
ときどき二分されるけれど
しばらくするとまた
ぴったりと合わさる
一面の静寂
空を飛ぶものも今はいない
鳥も飛行機も巣穴に帰ってしまった
誰のものでもなくなった空に
ぽっかりと浮かんでいる
僕は君に会いたかった
「ミッドナイト」