吹き抜ける風の中に 時々秋が見える
昨日より低い軌道で巡る太陽
疲れた街路樹の薄い影が揺れてる
これといった思い出もないまま
季節は閉じていこうとしてる
蝉しぐれも 風鈴の音までも
全部引き連れて
何かで一杯になった小さな箱だけが
疑問符のように残される
昨日の空気は澄んでいて
町の輪郭がはっきりとしていた
そこには何の間違いもなかった
夏の間、僕らはずっと
隙間だらけの空気の中に紛れていたけれど
昨日はもうだめだった
凛とした町並みに
僕らは向かい合うことしかできなかった
その景色に圧倒されながら
それが発する密かな声を聞こうとしていた
夏は突然、秋に変わったのだ
浅い付き合いの中でふと気づく時がある
何となくこの人とは気が合うのだろうと
そして多分、相手も
そんな気がしてるんじゃないかと
根拠のない自信に支えられた
ただただストレートな感覚
理由はなく説明もできない
慎重に選んだ言葉をさらに抑えて伝え合い
長めに距離を保ったままで
淡いやり取りはつづく
壊さないように、外さないように
それぞれがビビりまくりながら
もどかしい糸の上でバランスを取って
見えない底の方で通じ合う
細かな編み目をつなげ
失速寸前のスピードで
ようやく広がりだす内気な世界
ジャングルジムから見渡していた世界は
あれからどんどん高くなっていって
新しさと機能性を競い合うビル群に
僕はいつの間にか取り囲まれた
今は見上げてばかりの
コンクリートの隙間の空に
月や星やなんかを見つけると
歓喜するんだ
先日の満月の時の
君のリアクションが正にそれで
僕はなんだかうれしかった
僕らには何の共通点もないと
ずっと思っていたから
短い影が追いかけてきて
足元に絡みつく
振りはらっても
無しにしたくても
影は消えてはくれないから
思い切ってつまみ上げて
懐に突っ込んだ
日常をサボって抜け出した日は
町中のベランダで洗濯物がはためいてる
久しぶりの太陽光線に
表も裏もきれいにさらされ
いつもの道はカラフルに揺れ動く