浜辺 渚

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5/6/2025, 2:22:48 AM

手紙を開くと入れ子式に小さな手紙が入っていた。1枚目の手紙が白い洋封筒だったのに対し、2枚目は茶封筒になっていた。
茶封筒を開けてみると、そこには白い便箋に滲んだ黒いインキが見えた。
便箋を広げると、そこには「この手紙は練習です」と一言書いてあるだけだった。
僕は不気味に思えて、直ぐにその手紙を捨てた。心当たりは無かったし、イタズラだとしたら丁寧すぎる。それは、何かを予感させる不気味さを持っていた。

5/4/2025, 11:08:32 PM

次の授業は理科だったため、校舎の渡り廊下を使って理科室に向かおうとした。
校舎はH型で左右を東棟、西棟と分かれ、それを2階にある長い渡り廊下で繋いでいた。
理科の教科書を抱えて、友達と他愛もない会話をしながら歩いていると、ふと前から歩いてくる女の子と目が合った。
無駄を削ぎ落としたみたいな綺麗な輪郭に、大きな目と小さな鼻。髪型は綺麗に揃えれられたボブヘアーで、とても整った外見をしていた。
僕は彼女の瞳から目を反らせず、その場で立ち止まってしまった。彼女の瞳には人を精神的にも物理的にも惹き込ませる引力があった。美術館であまりの作品の壮麗さに足を止めて眺めるみたいに、僕は彼女の方をじっと見ていた。
彼女は1人で足早に通り過ぎようとしていた。恐らく、彼女の視界に僕の奇行は写っているだろうが、そういうことを一々気にしないほどに慣れているんだろう。
そのまま彼女が廊下を通り過ぎるのは僕は呆然と眺めていた。
廊下を渡りきり、校舎の中に入って見えなくなった時にはじめて我に返った。

僕は人には嫌でも人を惹き付けてしまうような人とどう努力しても滅多に注目されることがない人がいると考えている。どちらが優れているかはではなく、それは生まれつきアブラムシに羽があったり無かったりするみたいにある種の生物的な現象なんだと思う。

5/3/2025, 4:35:54 PM

瑠璃色の鳥が前を横切った。
目で追ってみようとしたが、鳥は直ぐに遠くの空へと消え去ってしまった。
これでは、僕が瑠璃三鳥のどの鳥を見たかが分からない。もしかしたら、ソウシチョウの可能性だってある。
もう少し観察者に優しい鳥に育って欲しいものだ。

5/2/2025, 3:58:35 PM

過去の甘い記憶って言うのはある種の夢魔のようなものだと思ってる。無味乾燥の現実をキャンディーやチョコレートでコーティングして、あたかも上等なもののように見せかける。タチが悪いのは、それはかなりの時間が経って初めて行われる。どうにかして欲しい現在はむしろ余計な手出しによって一層退屈に思えてしまう。

5/1/2025, 4:05:11 PM

風が吹くと桶屋が儲かると言うが、そういうのは過去の慰めにはなっても、現在の事象を説明するにはあまりにも無責任すぎる。

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