次の授業は理科だったため、校舎の渡り廊下を使って理科室に向かおうとした。
校舎はH型で左右を東棟、西棟と分かれ、それを2階にある長い渡り廊下で繋いでいた。
理科の教科書を抱えて、友達と他愛もない会話をしながら歩いていると、ふと前から歩いてくる女の子と目が合った。
無駄を削ぎ落としたみたいな綺麗な輪郭に、大きな目と小さな鼻。髪型は綺麗に揃えれられたボブヘアーで、とても整った外見をしていた。
僕は彼女の瞳から目を反らせず、その場で立ち止まってしまった。彼女の瞳には人を精神的にも物理的にも惹き込ませる引力があった。美術館であまりの作品の壮麗さに足を止めて眺めるみたいに、僕は彼女の方をじっと見ていた。
彼女は1人で足早に通り過ぎようとしていた。恐らく、彼女の視界に僕の奇行は写っているだろうが、そういうことを一々気にしないほどに慣れているんだろう。
そのまま彼女が廊下を通り過ぎるのは僕は呆然と眺めていた。
廊下を渡りきり、校舎の中に入って見えなくなった時にはじめて我に返った。
僕は人には嫌でも人を惹き付けてしまうような人とどう努力しても滅多に注目されることがない人がいると考えている。どちらが優れているかはではなく、それは生まれつきアブラムシに羽があったり無かったりするみたいにある種の生物的な現象なんだと思う。
5/4/2025, 11:08:32 PM