あなたのように、
どんな難解も素早く解ける才能が欲しい
あなたのように、
みんなから愛される才能が欲しい
あなたのように、
いつでも前向きに努力できる才能が欲しい
欲しい、ちょうだい、ください。
あたしなんか、
頭悪いからすぐになんて解けない
あたしなんか、
根暗で引っ込み思案だから誰からも愛されない
あたしなんか、
いつもマイナスに考えてそこで諦めようとする
あたしなんか、あたし、なんか。
真っ暗闇の中
あなたと勝手にくらべっこ
ねだってるあたしに
なんにも気づかずに――
〜ないものねだり〜
カラダの奥までドロドロになるくらい
愛し合って、
次の日にはキレイさっぱり
なんも無い関係
オマエを愛しているなんて
大きな嘘ついて、
飽きたらポイするだけの関係
そうなんでしょ?
……嗚呼ホント、
バカみたい。
〜バカみたい〜
「うん、僕は絶対に泣かないよ。だって、僕の大切な人と約束したことだから」
高校に入学したての四月。そう言って、キミは笑う。痛切に感じるほどに。殴り合いの喧嘩をしていたオレを救ってくれた救世主。それと引き換えに全身はアザだらけ。オレと一緒だ。それなのにどうして微笑むことができるんだ。本当に不思議だった。真っ白な天井を見つめたあと、またキミを捉えて口を開いた。
「そっか、ありが、と。こんなオレを、助けてくれて。病院まで運んでくれて。あと花も」
「当たり前のことだよ。だって中学生の時――いや、なんでもない。じゃあ僕は、そろそろ行くね。また明日来るよ」
「あぁ、気をつけて」
個室から出て一呼吸。彼の前では耐えることができた。彼の前では。とめどなく溢れてくる涙とともに、何とか歩を進めた。最悪の高校デビューだった。まだ続いていた。あいつらの悪さは。
中学上がりたての頃に、あいつらは話していた。ちょっと憂さ晴らしさせろ、って。それが全ての始まり。なんの関わりもない僕が標的にされて、散々嫌なことをさせられた。そんな時に助けてくれたのは君だったのに。転校してきた君だったのに。言ってくれたじゃんか、『こういうこと、見て見ぬふりできない。オマエは笑っている方が一番似合ってる。これからも太陽みたいな明るい笑顔で、他の人のこと照らしていけよ。オレのこともな。これ、約束な』って。そんな勇気ある行動に、温かい優しさに強く心を惹かれた。
(それから、移り変わって彼に……)
僕と同じようなことをされていた。「やめて」って言いたかった。あの時、臆病になって見ているだけだった自分が憎い。高校生になってからは大丈夫だと思っていた。でも、そんなことは無かった。再び同じ光景が目に入った時、僕の身体は勝手に動いていたんだ。
(でも、前のような彼は、いない)
思わず足を止めて、近くの壁にもたれ掛かる。爪が食い込むほど強く拳を握った。覇気がなくなり、弱々しくなってしまった君。僕のことも記憶から抜け落ちているのだろう。あの出来事のせいで。さっきの姿、言動を思い出す度心臓が締め付けられて、苦しくなる。
早く、早く思い出してほしい。それまでずっと僕がそばにいるから。支えていくから。
そう切に願いながら、また僕は歩き出した。君が戻ってきた時、この胸に秘めている想いも、伝えたいから……
~泣かないよ~
あなたの視線にあるのは――誰?
やんちゃな子供を見つめる母親のような瞳をして。
君は微笑んでいた。
校庭で楽しそうに遊んでいる僕の友達を。
僕は隣で見つめていた。
そんな君のことを。
こっちを見てほしいという気持ちを込めて。
じっと横顔を捉えていた。
きっと交わることの無い、この瞳。
君はあいつを追いかけていて、好きだってことくらい、
どんくさくて鈍い僕なんかが分かってしまうんだから。
~安らかな瞳~
ずっと隣で
アイツの笑っている顔を見たい
素直になれないけど
愛しているのは、変わらない
オレの声が聞こえれば
ピクリと耳を動かして
すぐに走ってくる
太陽みたいに明るく笑ってくれる
ずっと隣で
彼が笑っている顔を見たい
いつもすぐに駆け寄ってくるのは
大好きだからなんだよ
ボクの声が聞こえれば
黒くて長い耳が真っ直ぐに伸びて
すぐその方向を向く
恥ずかしいのか、またぺたんと垂れちゃうけど
一人の大きくて丸まっているシッポに、
もう一人の小さくてふわふわなシッポ。
二人は目を閉じ、お互い寄り添いあっていた。
とくん
とくん
お互いの心音が聞こえるくらい、
素直に、ひっそりと。
昼下がり、校庭にある一本の大樹の下で。
〜ずっと隣で〜