ワタシはこれまで、たくさんの人の物語を見てきたわ。
とっても裕福で笑顔が絶えない人。
貧しくて優しい誰かからお恵みを貰っている人。
波瀾万丈な人生を歩んでいる人。
何にもない、平坦な道を歩いている人。
そのどれもを、この目で見てきた。
共感することだってあったし、懐かしく思うこともあった。
……あら、また誰かの物語が鳴り響いている。
今日はこの方のお話を読んでみようかしら。
〜もう一つの物語〜
〜懐かしく思うこと〜
誰も寄り付くことのない暗い森の奥。
そこにひっそりと佇む、ひとつの小屋。
私はここで、二人お茶会を開く。
私がブレンドした紅茶。
後味がスッキリして飲みやすいのよ、とあなたに提案する。
なのに、あなたは何も話してくれない。
美味しいとも、不味いとも言わない冷たい体。
私は一筋の涙を零す。
あなたは一筋の血を流す。
そこにほのかに漂うのは、紅茶の香り。
ただそれだけだった。
〜紅茶の香り〜
〜暗がりの中で〜
愛してる。
私の元を去る前に言って欲しかった。
〜愛言葉〜
友達って、何?
自分にいつも優しくしてくれて、辛い時は励ましてくれる存在?
それとも、毎日張り合っているけど、なんだかんだで良きライバルになっていて、お互いを高め合っている存在?
分からない。分からないよ。
私とあなたの意義が違うくて、
重さが違うくて。
もはや友達ではないと思い始めている自分がいる。
〜友達〜
「待って、ほしい」
きれいな青空が澄み渡る休日の午後。
私はとあるカフェで、彼を振った。
理由は簡単。
私と彼とでペースやら何やらが釣り合わなくなってしまったから。
だから私は一刻も早く、あなたと別れたい。
なのに、どうして止めるの?
目の前の彼は情けなく涙をボロボロと零し、私の手を握ってくる。
だけど私はもう戻る気は無い。
「いやよ。それじゃあ」
それだけ言い残して席を立つ。
そしてそのまま彼を取り残して、会計はちゃんと済ませて、カフェを出ていった。
〜どこまでも続く青い空〜
〜行かないで〜