ふわり、と僕のもとへ飛んできたのは、ひとつの麦わら帽子。
真っ赤なリボンはくたびれて、所々網目がもつれている。
どこからやって来たのか。
ひまわり畑の中心で考える。
すると、どこからか幼い女の子の声が。
「おにーさん!そのぼうし、ちょうだい?」
いつの間にか、目の前には小さな女の子がいた。
ひまわりをそのまま擬人化したような、元気いっぱいで明るい子だった。
僕は、その子に手渡しすると、女の子はキラキラ眩しい笑顔で、感謝の気持ちを伝えてくれた。
「ありがとう!」
久しぶりに聞いたその言葉に、僕は微笑みを返して言った。
「どういたしまして」
〜麦わら帽子〜
空が、紺色のペンキを塗りたくったようになった頃。
私は貴方に別れを告げる。
星なんて一つも見えない。
お別れだって言うのに、貴方の視線はスマホに注がれている。
私は、今日という日の最後の最後まで、貴方のことしか考えていなかったのに。
ずっと見つめていたのに。
貴方は見てくれないのね。
最後の一本の電車がやって来た。
「じゃあね」
「おう」
それだけの会話。
私は今日も自分の家へと帰る。
コツン、とヒールの音を響かせて、つり革を掴む。
その時ですら、ちらりとも見ずに、貴方は帰った。
寂しいのに。
貴方はなんとも思っていないのね。
〜終点〜
今日が上手くいかなくたっていい。
明日はきっと上手くいくから。
ありきたりな言葉かもしれない。
だけど、この言葉で救われた人がどれほどいることか。
〜上手くいかなくたっていい〜
いつかの話。
生まれながらにして、片目が金色の瞳をした女の子がいた。
その子は『珍しい』という、たった一言の理由で蝶よ花よと大切に育てられてきた。
だが、成長するにつれて、瞳は金から黒へと変わる。
その瞬間から、人々は途端に彼女へ興味を示さなくなった。
『普通の人間と変わらないから』って。
〜蝶よ花よ〜
そうだ、全部最初から決まってたんだ。
この年に生まれて、
この年で保育園、小学校、中学校、高校、
ここで働く
あの人と結ばれる、
そして、この年で死んで、
全ては定まっていたこと。
私なんかの手じゃ、到底届かないようなところで、高みの見物をしている人物が。
……運命。変えられるもんなら、変えたい。
〜最初から決まってた〜