桜が舞い散る大樹の下で、彼女はこう言った。
「またここで会いましょう」
とても穏やかな表情で、後ろに手を組みながら。
黒髪のボブヘアーが、春風に揺られる。
さんさんと日光に照らされて、光り輝いているように見えた。
途端に、強く風が吹く。
思わず目を閉じてしまった。
風がぴたりと止み、瞼を開けた時には、もうあの人の姿はどこにもなかった。
――なんてことが、前にあった。
あの時のワンシーンはずっと頭に残り続けている。
ただ、あの彼女と何をしたのか、そもそもどんな関係なのか、今でも自分は分からない……
〜遠い日の記憶〜
お母さんの、あの穏やかで優しい笑顔。
今、元気にしてるかな。
私は元気いっぱいに頑張ってるよ。
都会は、まだ不慣れなことが多いけど、
何とか生きています。
もう少ししたら、そっちに帰るね。
〜空を見上げて心に浮かんだこと〜
「ね、全部終わりにしよう、○○」
「は?どういうことだよ、△△」
「そのままの意味だよ。君も一緒に死ぬんだ!」
「な、なんで……なんで俺まで!!」
「大好きだから。君のことが大好きだから。僕たちは小さい頃からずっと一緒。小中高も。高校の時、君と恋人にれて本当に幸せだった。でも……でも僕の余命は残りわずかなんだよ!!」
「っ……まず刃物を下ろせ!ゆっくり話し合おう、な?」
「そうしたら君は逃げる!ひとりで消えるのは……怖いよ……僕のわがままなのは分かってる。でもこれが最期のお願い。ずっと一緒だよ、○○」
――翌日、○○と△△は、△△の部屋で二人抱き合って眠っていた。
片方は穏やかな顔をしており、もう片方は恐怖に怯えたような顔をしていた。
二人はずっと目覚めることはなかった。
〜終わりにしよう〜
みんな仲良しになればいいのに。
互いに手を取り合って、助け合う。
そんな世界になればいいのに。
〜手を取り合って〜
私だけが、あの人をとてもとても愛しているという優越感。
でも、
周りを見てみれば、
私は、これっぽっちしか愛していないのかという劣等感。
〜優越感、劣等感〜