ざざーん、ざざーん……
波が押し寄せては引いていく。
私は裸足で誰もいない砂浜を歩く。
真っ赤になっている夕日は、自分の影を伸ばしていく。
長く、長く伸ばしていく。
ちゃぷ、
私の足元まで、波がやってきた。
烏さんもそろそろ帰る頃。
カァカァと遠くで鳴いている。
真っ赤な夕日も海に溶け込む頃。
私もそろそろ帰らなきゃ。
今日の夕飯はなんだろな。
大好きなハンバーグならいいな。
〜沈む夕日〜
君の目を見つめると
なんだか異空間に来た雰囲気になる。
だって君は
新たな島へ冒険しに行く人のように
いつもキラキラ瞳を輝かせて
前だけを
希望だけを見つめて生きている気がするから。
だから、吸い込まれて
虜になってゆく。
周りのみんなも、そして自分も。
〜君の目を見つめると〜
かつてある夫婦は、辺り一面色とりどりの星に囲まれた、なんとも幻想的な空間で、二人だけの結婚式を挙げたそうだ。
いや、その言い方では、誤解があるか。正しく言えば、たくさんの星たちと一緒に、式を挙げた。
式を終えたあと、二人は地面に寝転がった。
もちろん、手を繋いで。
夫が言った。
「僕たちの余命はあと、一年だってね。きっと、あっという間に過ぎていくんだろうなぁ。これ以上、早く死んじゃうとか、嫌だよ?」
妻が言った。
「大丈夫よ。私たちはもっと長く生きるわ。あの流れ星が願いを叶えてくれるもの」
そう、二人は願った。
もっとこの人と共に、楽しく笑って生きていたいと。
心配性な夫に、強気な妻。
……先に亡くなったのは、妻だった。
二人とも、一年以上生きることが出来た。
だが、先に、夫よりも一日先に、亡くなってしまった。
そして、それを追いかけるように夫も亡くなったそうだ。
二人はまた巡り会うことが出来るのだろうか。
いや、きっとできるだろう。
そんな二人のお墓は、式を挙げた場所と同じく、満点の星空が見える位置に、そっと並んで建てられているらしい。
〜星空の下で〜
あなたは、ずっとずうっと子供のままでいいの。
全部、お母さんが面倒を見てあげるからね。
あなたの好きなお菓子、ゲーム機、マンガ本。何から何まで、ぜ〜んぶ買ってあげる。だから、どうか私から離れていかないでね?
いっぱい甘えてくれるならそれだけでいいの。
後はもう、何も要らない。
あなたが私と一緒に生きてくれるだけで、幸せなのよ。
自分が産まれてからろくに親に愛されず、
要らないモノ扱い。
学校になんて行かず、そこら辺の大人と遊んでいた。
別に、そんなことしたってなんにも叱られなかったから。
そして、自分の何に惹かれたんだか分からないやつと結婚して離婚して。
またさらに他の男と結婚して離婚して。
そんなことをずっと繰り返していた。
……そして、あなたのお父さんもどこかへ消えちゃったわ。
でも大丈夫。あなたがいるから。
たくさん愛を注いであげるわね。
だから、あなたは一生子供のように私に甘えていればいいの。
それでいいのよ。
〜それでいい〜
「お姉ちゃん!そのお菓子、1つだけちょーだい!!」
小学校1年年くらいの時の妹はすんごく可愛かった。ちょっと舌っ足らずな言葉で、両手を前に出して欲しいアピールして。中々あげないと、うるうるした瞳で見上げてきて。そんな姿に愛おしさを感じて、自分が一番大好きなお菓子だったけど、あげていた。まぁ、私の方がお姉さんだったしね。
でも。
「お姉ちゃん、お姉ちゃんが持っているものぜーんぶちょうだい?」
私の好きなバッグ、友達、恋人……その他諸々。
高校に入ってから、可愛いなんてちっとも思わなくなった。私の大切なものを奪い取るように持っていく。なかなか手に入らない時は、ワントーン高い声を出す。そして甘えるように私に言い寄っては、直接ターゲットに這い寄る。……なんでこんなやつの姉なんだろう。
〜1つだけ〜