かつてある夫婦は、辺り一面色とりどりの星に囲まれた、なんとも幻想的な空間で、二人だけの結婚式を挙げたそうだ。
いや、その言い方では、誤解があるか。正しく言えば、たくさんの星たちと一緒に、式を挙げた。
式を終えたあと、二人は地面に寝転がった。
もちろん、手を繋いで。
夫が言った。
「僕たちの余命はあと、一年だってね。きっと、あっという間に過ぎていくんだろうなぁ。これ以上、早く死んじゃうとか、嫌だよ?」
妻が言った。
「大丈夫よ。私たちはもっと長く生きるわ。あの流れ星が願いを叶えてくれるもの」
そう、二人は願った。
もっとこの人と共に、楽しく笑って生きていたいと。
心配性な夫に、強気な妻。
……先に亡くなったのは、妻だった。
二人とも、一年以上生きることが出来た。
だが、先に、夫よりも一日先に、亡くなってしまった。
そして、それを追いかけるように夫も亡くなったそうだ。
二人はまた巡り会うことが出来るのだろうか。
いや、きっとできるだろう。
そんな二人のお墓は、式を挙げた場所と同じく、満点の星空が見える位置に、そっと並んで建てられているらしい。
〜星空の下で〜
4/5/2023, 3:12:49 PM