誰?
あなたは誰なの?
人影に向かって問いを投げる。
影は何を言わずに、ただじっとそこに立っている。
ねぇ、いい加減教えてよ!
ずっとあたしの夢の中に出てきてさ!
一体何がしたいわけ……?
影の背後には、真っ白な光。直視できないほど眩しい。あたしは俯き、ひたすらに言葉を続けた。
すると、その思い伝わったのか、最初に出てきた言葉は――
『前を見て、歩んでいきなさい』
そう言われた途端、急にあの光に、影ごと包み込まれた。あたしは思いっきり目を瞑る。
そして、目を開けたならば、見慣れた天井。
あれ以来、あたしはあの人影の夢を一切見なくなった。
あれは一体誰だったのだろうか。
〜逆光〜
僕は、ある日、こんな夢を見たんだ!
何もかもが、自分の思い通りにいく夢!!
テストで100点を取りたいって、思ってたら本当に取れちゃった。
給食ジャンケンで勝って、デザートもらえちゃった。
ずっと口を聞けていなかったお友達とも、仲良くなれちゃった。
だけど。
みんなの顔は、不気味だった。
お人形さんみたいな感じがした。
最後には、僕はみんなから囲まれていた。
たくさんの目が、たくさんの口が。
ずっと僕を睨みつけて、何かを話していたんだ。
……やっぱり、何もかも思い通りに上手くいく人生って、羨ましいけど、とっても怖いなぁ。
〜こんな夢を見た〜
タイムマシーンなんて、いらない!!
だって、過去も未来も自由に行き来出来たら、つまらないじゃない。
あたしは、『今』を思いっきり楽しみたい!!
過去なんて作り変えようとしなくていい、
未来なんて見通せなくてもいい、
何が起こるのか分からない『今』を生きる方が、冒険みたいで、絶対楽しいと思うの!
――だから、あたしは!
〜タイムマシーン〜
今宵は月が綺麗ですね。
なんて言ったら、彼はどんな反応をするのだろう。
照れるのかな。それでも普通に綺麗だねって返すのかな。
自分は、圧倒的後者だと思う。彼、すごく天然だもの。真の意味なんて、きっと理解できない。
ねぇ、愛しのテディベア。
そんな『彼』をぎゅっと抱きしめる。
今日、私は大好きな人を亡くした。
しかも、自分の手で。
……だって、彼が悪いんだよ?
他の人のところに行っちゃうから。
このテディベアは、私から彼へ送ったものだ。
きちんと大切に保管してくれてたんだろう。
だが、今は返り血が飛んで、所々に水玉ができている。
自分ももう、長くはないな。
なんて思いながら、人生初の赤ワインを口内で転がしていた。
〜特別な夜〜
――誰かが、呼んでいる。
いや、『叫んでいる』の方が正しいのか。
えっ、どうして私を浮き上がらせるんだい?
海の魚さん。
私を餌にしてくれてもいいのに。
あっ、そうか。
私は汚くて醜いから、食べたくもないよね、そんな肉塊。
私は『必要とされていない人間』だから、海の底に身を隠そうとしたただけだよ。
なのにどうして。
私の体は、勝手に、上へ上へと浮かんでゆく。
嗚呼、何故……
私はあの太陽に手を伸ばしているのだろうか。
見たくないくらい輝いて、眩しくて、嫌なのに。
〜海の底〜