「あっ、また来た。メッセージボトル」
ひとり、ゆったりと海岸沿いを歩いている時、私は見つけた。それを拾い上げ、服の裾で軽く拭く。中には、くるくるに巻かれた手紙と、花の種。
わあ、今回はなんの花の種だろう。そして手紙……今日はどんなことが書いてるのかな。家に帰ったら書こう。
『あ、また流れてきた。メッセージボトル』
ひとり、海岸沿いを走っている時、僕は見つけた。それを拾い上げ、片手で掲げる。中には、くるくる丸められた手紙と、花の種。
よし、今回も僕の庭に植えよう。手紙は後で書くとするか……
“――あぁ、早く君に会いたい”
〜君に会いたくて〜
この日記は、昔、姉が書いていた。
だが、どこのページもボロボロ。
達筆で、綺麗な文字。
喜怒哀楽の感情が綴られた内容。
そして、一番の最後のページ。
この日記の最後の言葉。
『私は、自分の記憶を一生手放さないようにするために、抱きかかえたまま、燃え盛る炎の中で人生を終えます』
火事が起きた日。
姉以外はみんな避難することが出来たが、姉はこの日記を書き切るために、逃げ遅れてしまった。
落ち着いた後、自分たちの家へ訪れた。
そこには姉が愛していた日記帳が変わり果てた姿で見つかった。
――姉は今、どうしているだろう。
あの日までの記憶が閉ざされた日記帳を、自分も抱きかかえた。
〜閉ざされた日記〜
あら、そこの葉っぱさん。
Shall we dance?
ふたつの葉っぱが、風に踊らされる。
ふわり、と飛んで
くるり、と回り
またふわり、と飛ぶ。
ほら、あなたもあなたも。
Let's dance!
たくさんの葉っぱが、風を巻き込んで踊る。
ふわ〜っと、いっぱい
くる〜っと、渦巻き
またふわ〜っと、いっぱい。
……人間のあたしも混ざろうかしら?
〜木枯らし〜
「突然ですが、質問してもよろしいでしょうか? ……私、○○というものでして……あなたにとって、『美しい』と言えばどんなものがありますか?」
ある一人の少女が答える。
「やっぱり、友情でしょ! あたしとこの子、二人がいればちょー最強なんだから!」
元気いっぱいの回答、ありがとうございます。
ある一人の貴婦人が答える。
「ん〜、やはり、この宝石たちですわねぇ。私が世界中を巡って入手した、どれも貴重なものなんですから! こうね、太陽にかざすとね、みんな違う色を見せるのよ! 美しいわよねぇ〜」
ほんとだ。きれいですね。回答、ありがとうございます。
ある一人の男性が答える。
「……あの鳥。あんな風に飛べたらなって、俺はもう飛べるわけないんですけどね。今となっては社会のゴミだ。これでいいかい? 用が済んだなら帰ってくれ、俺は寝る」
……あらら、ベンチで寝てしまいました。回答、ありがとうございます。
――あ、ちょうどいいところに。ぜひ、あなたの声も聞かせてもらいたいです。
あなたにとって、『美しい』ものと言えば?
〜美しい〜
「この世界は、あなただけのものだ」
自身の狭い心の中で、反響する。ずっと前に、誰かから言われた言葉。嫌な事があった時、辛くなった時、私の心にはこの言葉がよく出てくる。
「この世界は、私だけのもの……」
少なくとも、自身の心の中だけは。だから、誰にどう言われようと、私は私。自分で何もかもキッパリ決めて、行動出来たら一番いい。だけど、現実はそうもいかない。優柔不断で、周りに流されやすい私には。
「この世界は、あなたのもの……」
ほらまただ。
私は鳴り響いて止まないこの言葉を、なんとかして止めたかった。だから、私は大声で叫んだ。
「この世界は私だけのものなんだ!! 誰も邪魔するな!!」
〜この世界は〜