この国には古くから言い伝えがある
遥か昔、白銀の髪、紫色の澄んだ瞳
今で言うアルビノの少年が産まれた
彼が笑うと空は晴れ
彼が泣くと空も泣き
怒ると雷が落ちた
少年は神に愛された子供ととして
この上なく愛された
そんな少年は18の時に死んでしまったのだ
雨は降り続き、民は嘆き苦しんだ
それからその国では雨は止むことを知らず
晴れはどこか遠くへ消えてしまった
「今日も空が泣いている」
『雨しか降らなくなった国』
私にとっての当たり前は
家には祖父母が居て
父親はおらず、母が頑張って働いてる
それが普通だった
小学校低学年の時、それが容易く崩れた
「これお父さんに買って貰ったの!!!」
当時流行っていた筆箱を持って
満面の笑みで笑っていた
お父さんから??
お父さんからの愛情なんて知らない私は
幼いながら一日中考えた
結局分からなくて
お母さんに聞いてみた
「私のお父さんは??」
どんな人?
どんな容姿?
どこの人?
「....貴方のお父さんはね〜」
私は15年経った今でも覚えている
一瞬母の顔が曇ったことを
死んだと伝えられたが
それだとどうも腑に落ちない
ねぇお母さん....
お父さんは私を愛してくれてたの?
お母さんは、お父さんの血が流れてる私を
どう思ってるの?
『聞けない事情』
登場人物は私と貴方
私は平民で
貴方は貴族
偶然街で出会って
話して
遊んで
恋に落ちる
2人駆け落ちして
静かな森の一軒家で仲良く暮らすの
「こんなベタな恋愛も良いでしょう?」
木漏れ日が地面を照らす
豊かで静かな森の中
お墓の横で静かに眠りについた
どうか次目が覚めた時は
貴方が居ますように
『貴方と私のベタな恋愛』
夜中の午前2時
寝ようにも寝付けずテレビを付けてソファーに座る
恋愛ドラマが流れれば
海辺で1人の女性が泣くシーンだった
そのまま番組を変えるわけでもなく見続けていると
ピコンとスマホがなる
こんな夜中に誰かと思えば仲のいい友達だった
話を聞くと親に家から追い出され
気分転換がてらドライブに行きたいとの事...
(だぁれが車を出すと思ってんだか)
テレビを消して車の鍵を持って家を出る
ぶつくさ言いつつも車を出してしまうのは
惚れた弱みとでも言うのだろうか
「ごめん急に」
ラフな格好に一瞬心臓が跳ねる
「別にいいよ
海にでも行こう」
夜の海は月が反射して眩しく
波の音が自然と心に染みる
砂浜に腰を下ろすとぽつりぽつりと話し始めた
話すにつれ途切れることが多くなり、声が震えてくる
横を見れば泣いていた
(、、、綺麗)
涙は月明かりに照らされて
美しく光り輝いていた
『映画よりも美しく』
子供に怒鳴ってしまった
手を振りかぶった所で
怯えた顔が小さな時の自分と重なる
「ぁ、、ごめ、、」
小さな体が小刻みに揺れ
床にポタポタと雫が落ちる
叩かれると反射的に強ばった証拠
恐怖で溢れた生理的な涙
(母親のようにならないと決めたのに)
蛙の子は蛙
結局親のようになってしまうのだ
子供に優しく抱きつき
ごめん、と泣きながら謝る
頭に置いてくれた手は誰よりも暖かかった
まだ、育て方を見直せる
私と同じ境遇に置いてはだめ
顔を上げ、腫れた目を見て笑がこぼれる
「目、腫れちゃったね笑」
ほっぺを両手で挟んで2人笑い合った
『トンビが鷹を産む』