「やっほー、また来たよ」
『君は懲りないなぁ笑笑』
微笑みながら向かってくる彼
僕に毎日飽きもせず会いに来る。
もうかれこれ1年、、かな?
「元気?」
『あぁ!元気ピンピンさ!』
「ご飯はちゃんと食べてる?」
『君は僕の母親か???
まぁこの話は置いといて....』
「どうせ君のことだ...何も食べてないんだろ?」
『....何故バレた』
何故か昔からこいつに嘘は通じない。
どんな事も彼にはお見通しという訳だ笑
「今日は落ち葉拾いをしたんだ。」
『それはご苦労な事だ』
「それもこれも、君が植えた
でっかい木のせいだからな??」
『あれまぁ』
「それなのに君と来たら...手伝いもしないなんて」
『そんなに怒らなくていいだろう??』
そんなことを言えば
急にふふっと笑って
「それじゃぁ、まだ家に落ち葉が残ってるんだ、
帰るよ」
『もう帰るのか...気おつけて帰れよ』
「寂しがらなくたって、また来るよ」
僕の名が書かれた石に手を置いて
彼は悲しそうに笑った。
『(寂しがってるのはどっちだよ....)』
去っていく背に手を伸ばしたが、
無様にもすり抜けてしまった。
『もう君に触れることさえ出来ない....』
「大丈夫...ですか?」
大雨の中うずくまっていた私に
1人の男性が傘をさしてくれた。
今にも泣きそうな他人の話を
彼は嫌な顔ひとつせず聞いた。
気持ちが落ち着いた私に
「では、気おつけて」
と言って帰った彼は、今や私の彼氏である。
今思えば、なんだかドラマのワンシーンのような出会い方だなぁなんて笑
仲の良い関係を築けていたと思ったのに....
「別れよう」
唐突に言われた言葉
私にとって信じたくない言葉
なんで?どうして?何が不満だったの?
聞きたいことは山々なのに、上手く口が動かない。
この現実から逃げるように家を出た。
どこまで走ったか分からない
段々とコンクリートの色が黒くなって
ザーザーと大きな音をたて始めた。
私の号哭さえ、神様には届かない。
『ドラマみたいな出会いの先は』
化学専門の彼に「詩は読んでいて恥ずかしくなる」と言われた事が幾度かあった。その意見を否定する訳じゃない。時々自分も詩を読んで感動した後、涙した事に恥ずかしさで本を投げ出したくなることもある。
だがしかし、数時間後にはその本を読み、また感動している自分がいるのだ。
本を読み終え寝床に着いた時
「自分にしてみれば、化学に魅せられる感情が
些か理解できない」
と考え眠りにつく事が多かった。
ふと思えば
自分は詩や小説に美しきを見いだせる。
彼が同じ感情を化学に抱いているのなら
それはきっと同士であり、分かり合える気がするのだ。
『少し違った似たもの同士』
親から愛情を貰えたのはいつまでだっただろうか
もう遠い遠い記憶だ
親が離婚して、母は壊れた
愛は人を壊すのだと
幼いながらに実感した
そんな私は高校生になり
未だ''恋''だの''愛''だのと言う言葉に嫌悪感を感じる
「好きだよ」
こんな一言がなければ...私は常人で居れたのに
無駄に目で追いかけて
無駄に背を追って
無駄に嫉妬して...
自分の口から
「私の事好きって言ったのに...!!!!!」
と言う束縛するような言葉が出た時は
生きてきた中で1番の驚きだ。
【愛は人を壊す】
私もまた、母親と同じ道を辿るのだろうか
『愛情の一片が私を私じゃなくした』
「おうじさまとけっこんできなきゃ泡になっちゃうの
かわいそうだね」
絵本の中のお姫様は、愛した人を殺すこともできず、
声も出せず泡になった
今でも思う。そんな彼女は心底可哀想
自分が助けたことも伝えれず横取りされた挙句
泡になって消えたのだから
高校生になって、恋をした
初恋だった
頑張って話しかけて、仲良くなって
連絡先も交換して
勝手に両思いなんじゃないかって浮かれてた
「ごめん!!俺彼女できたからもう遊べねぇわ」
「あ〜、!!まじか笑全然大丈夫!!うん、幸せに!!」
去っていく彼の足音と同時に
ガラスの割れた音が頭に響く
「好き」って言葉が喉に突っかかって気持ち悪い
なのに彼の笑顔はずっとずっとヒビが入らず
綺麗に残ってる
涙も出ない
急だったもん
私の初恋、こんなもんか....
帰り道
いつも見ているはずの、夕日が映る綺麗な海。
水平線が綺麗だけどもう見飽きた。
見たいつもの景色の筈なのに、
なんだか段々滲んできて
頬に涙が伝う
「どっかのプリンセスみたいに、泡になれたらなぁ」
そんな私の小さな願いは
静かな波音に攫われて
きっと泡になった彼女に届く
『泡になりたくなかった彼女と
泡になってしまいたい私』