於菟

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1/13/2025, 11:12:22 AM

この国には古くから言い伝えがある
遥か昔、白銀の髪、紫色の澄んだ瞳
今で言うアルビノの少年が産まれた
彼が笑うと空は晴れ
彼が泣くと空も泣き
怒ると雷が落ちた
少年は神に愛された子供ととして
この上なく愛された
そんな少年は18の時に死んでしまったのだ
雨は降り続き、民は嘆き苦しんだ
それからその国では雨は止むことを知らず
晴れはどこか遠くへ消えてしまった
「今日も空が泣いている」

『雨しか降らなくなった国』

1/12/2025, 12:39:50 PM

私にとっての当たり前は
家には祖父母が居て
父親はおらず、母が頑張って働いてる
それが普通だった
小学校低学年の時、それが容易く崩れた
「これお父さんに買って貰ったの!!!」
当時流行っていた筆箱を持って
満面の笑みで笑っていた
お父さんから??
お父さんからの愛情なんて知らない私は
幼いながら一日中考えた
結局分からなくて
お母さんに聞いてみた
「私のお父さんは??」
どんな人?
どんな容姿?
どこの人?
「....貴方のお父さんはね〜」
私は15年経った今でも覚えている
一瞬母の顔が曇ったことを
死んだと伝えられたが
それだとどうも腑に落ちない
ねぇお母さん....
お父さんは私を愛してくれてたの?
お母さんは、お父さんの血が流れてる私を
どう思ってるの?

『聞けない事情』

1/11/2025, 12:52:02 PM

登場人物は私と貴方
私は平民で
貴方は貴族
偶然街で出会って
話して
遊んで
恋に落ちる
2人駆け落ちして
静かな森の一軒家で仲良く暮らすの
「こんなベタな恋愛も良いでしょう?」
木漏れ日が地面を照らす
豊かで静かな森の中
お墓の横で静かに眠りについた
どうか次目が覚めた時は
貴方が居ますように

『貴方と私のベタな恋愛』

1/11/2025, 1:39:22 AM

夜中の午前2時
寝ようにも寝付けずテレビを付けてソファーに座る
恋愛ドラマが流れれば
海辺で1人の女性が泣くシーンだった
そのまま番組を変えるわけでもなく見続けていると
ピコンとスマホがなる
こんな夜中に誰かと思えば仲のいい友達だった
話を聞くと親に家から追い出され
気分転換がてらドライブに行きたいとの事...
(だぁれが車を出すと思ってんだか)
テレビを消して車の鍵を持って家を出る
ぶつくさ言いつつも車を出してしまうのは
惚れた弱みとでも言うのだろうか

「ごめん急に」
ラフな格好に一瞬心臓が跳ねる
「別にいいよ
海にでも行こう」

夜の海は月が反射して眩しく
波の音が自然と心に染みる
砂浜に腰を下ろすとぽつりぽつりと話し始めた
話すにつれ途切れることが多くなり、声が震えてくる
横を見れば泣いていた
(、、、綺麗)
涙は月明かりに照らされて
美しく光り輝いていた

『映画よりも美しく』

1/8/2025, 10:51:28 AM

子供に怒鳴ってしまった
手を振りかぶった所で
怯えた顔が小さな時の自分と重なる
「ぁ、、ごめ、、」
小さな体が小刻みに揺れ
床にポタポタと雫が落ちる
叩かれると反射的に強ばった証拠
恐怖で溢れた生理的な涙
(母親のようにならないと決めたのに)
蛙の子は蛙
結局親のようになってしまうのだ
子供に優しく抱きつき
ごめん、と泣きながら謝る
頭に置いてくれた手は誰よりも暖かかった
まだ、育て方を見直せる
私と同じ境遇に置いてはだめ
顔を上げ、腫れた目を見て笑がこぼれる
「目、腫れちゃったね笑」
ほっぺを両手で挟んで2人笑い合った

『トンビが鷹を産む』

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