両足を揃えてチョンとね
小さく跳ねて首を傾げる
チュンと鳴いて
あらあら、催促かしら?
最初はあんなに警戒して、もう一つ向こうの柵から様子を見てたのに
今では小皿が出てないか近くまで見に来てる
よく見てると、なんとなく関係が見えてくる
ガリガリの細っこいのが食べようとすると、丸々とした大きいのが突っついて意地悪するのよね
私はそっちの子に食べてもらいたいんだけどなって思いながら見てると、
その子分みたいなのが要領良くおこぼれもらってて、あぁドラえもんの世界観はここにも存在するんだってなんだかスンってしちゃった
明日もまたおいで
明日はスタンドバイミーの世界観でいこう
あぁあれにはエースっていう不良がいたか
あの頃のキーファーサザーランドが私は好きだったな
そんな事は知らないとばかりに、またチュンと強く鳴く
懐かないくせに
近寄らせないくせに
そんなとこも可愛いけどね
またね
またね
明日も来てね
蝶よ花よ
何百の蝶よ
何万の花よ
群れの中の一匹も
道端の見慣れた一輪も
蝶よ花よ
一時の輝きを永久の光に
一時の彩りを千代の艶に
蝶たちよ舞え
花たちよ咲け
幼子の手を引く若いパパが横切って行く。
付き合ったばっかりかな?微妙な距離感の2人が通り過ぎて行く。
ノリだけで生きてるっぽい奴らが騒がしく目の前を通る。
慣れない浴衣で、すでに不機嫌そうな女の子がスマホを睨む。
屋台の胡散臭さと金額を横目に見ながら、主婦っぽい人は足早に進む。
実行委員会のいい歳したおじさんは、得意げな顔してテントの中から眺める。
もらったお小遣いじゃ選りすぐりの一つしか買えないと不満げな子と、たくさんお金を持たされたけどみんなの空気を読んで使えない子の探り合い。
そんな人々を狛犬が見つめてる。
「それでいい」って言わないで
「それがいい」って言って
そんなことあるはずないと思ったんだ。
だってあなたは大人気で、現れた途端みんながあなたに群がった。
そもそも私はあなたからとても遠い場所で、近づくことさえ出来なくて、水滴だらけのグラスに口をつけ飲むフリをしながら横目で眺めることしか出来なかった。
女の人はもちろん、むしろ男の人の方があなたに夢中で、引っ込み思案な私は、周りに声を掛けてまであなたに手は伸ばせなかった。
今日も無理だったな。
本当は、数日前にもチャンスはあった。
今よりも断然競争率は低くてラッキーなことに近くにもいた。
なのに、あっという間にあなたは連れ去られちゃったよね。
いつまでも未練たらしく想うのも嫌だったから、周りの雑談に意識を向けて相槌を打ち、あなたを忘れる努力をした。
だから、だから、諦めてたのに。
ふと向けた視線の先で、まさかまだあなたがそこにいるなんて。
どうする?
手を伸ばしてみてもいいかしら?
私なんかが?
でも、だって、寂しそう。
どうしよう?
どうしよう?
あなたが欲しい!
「取ってあげようか?」
隣の人が私の視線の先に気がついて、一つだけ残ってた唐揚げを取ってくれた。
好き。