そんなことあるはずないと思ったんだ。
だってあなたは大人気で、現れた途端みんながあなたに群がった。
そもそも私はあなたからとても遠い場所で、近づくことさえ出来なくて、水滴だらけのグラスに口をつけ飲むフリをしながら横目で眺めることしか出来なかった。
女の人はもちろん、むしろ男の人の方があなたに夢中で、引っ込み思案な私は、周りに声を掛けてまであなたに手は伸ばせなかった。
今日も無理だったな。
本当は、数日前にもチャンスはあった。
今よりも断然競争率は低くてラッキーなことに近くにもいた。
なのに、あっという間にあなたは連れ去られちゃったよね。
いつまでも未練たらしく想うのも嫌だったから、周りの雑談に意識を向けて相槌を打ち、あなたを忘れる努力をした。
だから、だから、諦めてたのに。
ふと向けた視線の先で、まさかまだあなたがそこにいるなんて。
どうする?
手を伸ばしてみてもいいかしら?
私なんかが?
でも、だって、寂しそう。
どうしよう?
どうしよう?
あなたが欲しい!
「取ってあげようか?」
隣の人が私の視線の先に気がついて、一つだけ残ってた唐揚げを取ってくれた。
好き。
4/4/2023, 7:13:54 AM