やさか

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4/19/2023, 11:57:25 AM

 あなたのお葬式の様子が見たい。
 たくさんの人に囲まれた式でもいい。家族だけを集めた、ささやかなものでもいい。
 ただ、もしも。
 もしもその時、あなたの死を悲しむ人が、誰もいなかったら。
 そうしたら、わたしは意地でもその時まで生きて、あなたの棺の前でわんわん泣こう。たとえ百歳の婆さんになっていてもそうしよう。
 今、そしてこの先に、わたしがあなたの隣にいなくても、ずっと、ずっと、あなたのために泣けるわたしでいると約束しよう。これは、未来が見えなくても。


 #もしも未来を見れるなら

4/18/2023, 2:23:12 PM

 世界から色が失われた後、音はかつてなく鮮やかになった。
 C♯の音につややかな青を、Eの音に華やかな赤を。
 kの子音に涼やかな白を、uの母音に深い緑を。
 そうして、そんな幻を「見せる」ために、人は歌を、演奏を、音楽を磨き上げた。
 いまやその目で色を知らない子供たちは、その感覚だけを頼りに色を語る。
 世界は変わらず美しかった。美しさの質は変われど。
 いつか、今度は音がなくなったとき、次は何が、もっと美しくなるだろう。損なわれていく世界で、美しさはいつまで在り続けるだろう。


 #無色の世界

4/17/2023, 12:39:14 PM

 花筏が流れていく。
 三枚、四枚、寄り集まった薄紅色。
 あんな小さく儚い舟に、わたしは乗れない。
 だからただ、そうっと祈る。
 わたしのこの気持ちを連れていって。
 散った想いと、未練の種を乗せていって。
 それとも、涙のひと粒くらいなら、一緒に旅立てる?


 #桜散る

4/16/2023, 10:44:55 AM

 そんなものはどこにもない。
 いつだって、わたしのいる、ここ。ここだけ。
 確かなものは、自分の手の届くところにしかない。
 そうでない場所があるとしたら、それは。
 それは、もはやわたしのもとを去った、きっともう会うこともない、あのひとのいるところ。
 二度と手が届かないからこそ、その幻は確かになる。
 誰も、何も、それを嘘だと証明できない。
 だから、ここではない、どこかで。
 あなたのもとで。
 わたしの抱いた愛の幻は、生き残る。きっと。
 


 #ここではない、どこかで

4/15/2023, 1:20:22 PM

 それで、ボトルレターにしちゃったの?
 教えてほしいって言われたのに?
 まあ、恥ずかしかったのはわかるけどね、そりゃあ、そうでしょうけれどもね。
 でも、それにしたって、どうしてよりによって、海に投げちゃったのかなあ!
 これ、太平洋だよ? 多分もう見つからないよ?
 ほんとにもう、仕方のない子!
 あのねえ、ご存知ないようだから教えて差し上げますけれどね。
 気持ちを聞かれて、そんな顔で「あなたには恥ずかしくて教えられません」なんて言うのは、それがもう答えなの。ごまかせてないの。むしろ言葉にするより恥ずかしい解答のしかた、な、の!
 だから、言えない想いを海に流す、みたいなロマンスをやりたがるより先に、さっさと行って、ごめんって謝ってきなさい!
 届かないって泣くのは、あんたじゃなくてあの子なんだからね!


 #届かぬ想い

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