やさか

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 世界から色が失われた後、音はかつてなく鮮やかになった。
 C♯の音につややかな青を、Eの音に華やかな赤を。
 kの子音に涼やかな白を、uの母音に深い緑を。
 そうして、そんな幻を「見せる」ために、人は歌を、演奏を、音楽を磨き上げた。
 いまやその目で色を知らない子供たちは、その感覚だけを頼りに色を語る。
 世界は変わらず美しかった。美しさの質は変われど。
 いつか、今度は音がなくなったとき、次は何が、もっと美しくなるだろう。損なわれていく世界で、美しさはいつまで在り続けるだろう。


 #無色の世界

4/18/2023, 2:23:12 PM