冬のよく晴れた青が好きだった。
夏ではだめだ。春も、秋も、違う。
肌を切り裂くように冷たい風の中、けっして届かない、高い薄い青がよかった。
遠いというのがどういうことか、わたしはあの青に知ったのだ。
君が最後に、わたしに笑ったあの快晴に。
#快晴
星が落ちた、と君が言う。
遠い遠い場所で、白い星が落ちたのだと。
それは、わたしには見えない。
白という色のこと、夜空という暗さのこと、星という光のこと。
わたしの知らないものたちを、君が言葉にする。
白。昼間の白はあたたかく、星の白は、少し冷たい。
夜空。風のようにすうっとして、どこか寂しい。
星。乾いた砂の粒に似て小さく、針先のように鋭い。
君は、いつかわたしを連れて行ってくれると言う。
わたしのこの眼では感じられないものを、手に取れる場所へ。
いつか。いつかの未来に。
#遠くの空へ
祈りだ。
ただ、一心に祈っている。
何をどうしてほしいのかは、言葉にできない。
誰に祈っているのかも、さだかではない。
けれど、ただ。
ただ、祈っている。祈り続けている。いつまでも。
#言葉にできない
華やかな赤。つややかな黄色。鈴生りの薄紅。
この咲き乱れる花々の中で、本当に欲しいものは?
君が、一番美しいと思う色は?
尋ねられて笑う。
わたし、あんたの瞳の色がいい。焙じ茶みたいな、深くて透明な色。
ねえ、わたし今、この花畑でお茶が飲みたいな。
あんたと、あんたの目みたいな色のお茶を。
花は誰のためでもなく咲くけど、あんたは、わたしのためにお茶を淹れてくれるでしょう。
わたしだけのために。
花より団子なんて言うなよ。団子も、まあ、あったら嬉しいけど。
#春爛漫
わたしはぎらぎらしていたい。
輝かしい星なんかじゃなく。
優しい木漏れ日なんかじゃなく。
美しい水面なんかじゃなく。
人を斬るための刃のように、氷を砕くアイスピックのように、地を割るツルハシのように、ぎらぎらしていたいんだ。
誰よりも鋭い切っ先で、あなたの胸を抉じ開けたい。
その心臓に届きたい。
そのために、誰よりも、ずっと、ずっと、ずっと!
#誰よりも、ずっと