その奥に光がある。
見出そうとする者にしか見えない光が。
通り過ぎる雑踏の中では見つからないだろう。
そこに理想を見ようとしても、きっとだめだ。
君を知りたい。
僕はもっと、君を。
渦を巻く星空のように遠く果てしない祈り。
君の瞳のポラリスが、それを静かに導いている。
#君の目を見つめると
あれがぜんぶ落ちてくる日が、来ますように。
世界の終わりは、そんなふうに来ますように。
彼女はそう言って、両手を組み合わせて祈る。
その頬は笑っている。冗談だよ、と言うように。
実際、どこまで本気でどこまで冗談かはわからない。
でも、全部が冗談ではないだろう。
だから僕は、両手を組み合わせて祈る。
あれがぜんぶ、いつまでも空に輝いていますように。
世界の終わりは、僕と彼女の人生の後にして下さい。
#星空の下で
愛ではなかった。恋でもなかった。
君がわたしにくれるものは、そうじゃなかった。
それはもっと小さな、白詰草みたいな好意だった。
季節が巡れば消えてしまう、儚く無垢な想いだった。
わたし、今でも君を夢に見る。
でも、それでいい。それで、よかった。
#それでいい
お前に星をあげよう。
夜空に輝く星のうちから、どれでも、ひとつだけ。
そう言われて、僕は天を仰いだ。
それから、一面の星の中からよくよく選んで、幽かに光るひとつを指さす。
あんなに小さくて消え入りそうな星でいいのか?
確かめる言葉に頷く。
だってあの星は、君の瞳の奥にある光に似ている。
そんな星は、ひとつだけだ。
#1つだけ
誰にも見せたくないけれど、誰にでも見せたい。
だから、薄絹の向こう側に隠した。
曖昧なシルエットだけを、あなたがたの目に許した。
ねえ、見て。この素敵なものを。
わたしがそうやって示す、薄絹に揺れる影。
あなたはそれに何を見出すだろう。
きっとそれは、あなたの大切なものに似ている。
#大切なもの