いつも、君の嘘ならなんでもわかった。
君はじっと相手を見つめる。それから少し、くちびるの右端が笑う。よっぽど後ろめたいときは、言い終わったあとに、ちょっと強めに息を吸う。
でも、一年で一日だけ。今日だけは、わからない。
エイプリルフールの君は、楽しそうだから。
嘘をつくときの緊張も、こわばりもない日。
ただ楽しげに、どうでもいい嘘ばかり飛び出す日。
だから、わからなくてもいい。今日だけは。
#エイプリルフール
さらさらと流れる水の流れでありますように。
やさしく瞬く星の輝きでありますように。
ふっくらと開く薔薇の花びらでありますように。
するりと頬を撫でる春風でありますように。
あたたかく揺れる灯火でありますように。
ひそやかに微笑う葉擦れでありますように。
愛しい人へ。
たくさんの美しいものが、あなたを訪れますように。
#幸せに
来るか来ないかわからない君を待つために、毎日、部室に顔を出した。
ただ、君の来たとき、当然のようにいるために。
来なくたって構わないのに、来ないなんてわかっているのに。
ただ、君の来たとき、狙ったわけじゃないと言い訳するために。
そんな自分がいじましくて、ばかばかしくて。
でも、そうしたかった。
それ以外、何もできなかった。
扉の開くたび、なんともない顔をする。
期待なんてしてない。期待なんて、してない。
#何気ないふり
それは、月明かりの真下を歩くようなこと。
その光が失われる夜があっても、必ずまた輝くと信じられること。
エンドマークは永遠じゃないかもしれないけれど、あの日の幸せは、わたしの月を照らし続けている。
翳る日も、消えたわけじゃないと知っているよ。
一度終わった物語も、失うわけじゃないと、知っているよ。
#ハッピーエンド
わたしの中が透き通る。
あなたに何も見せたくなくて、透明に透明になる。
恋の赤色、嫉妬の紫。盲目の薄墨に、焦燥の鬱金。
あなたの前には広げられないパレット。
あなたの前では描けないキャンバス。
拙い想いを見つめられると、息ができない。
だからどうか、見なかったことにして。
透明だったことにして。
#見つめられると