愛ではなかった。恋でもなかった。
君がわたしにくれるものは、そうじゃなかった。
それはもっと小さな、白詰草みたいな好意だった。
季節が巡れば消えてしまう、儚く無垢な想いだった。
わたし、今でも君を夢に見る。
でも、それでいい。それで、よかった。
#それでいい
お前に星をあげよう。
夜空に輝く星のうちから、どれでも、ひとつだけ。
そう言われて、僕は天を仰いだ。
それから、一面の星の中からよくよく選んで、幽かに光るひとつを指さす。
あんなに小さくて消え入りそうな星でいいのか?
確かめる言葉に頷く。
だってあの星は、君の瞳の奥にある光に似ている。
そんな星は、ひとつだけだ。
#1つだけ
誰にも見せたくないけれど、誰にでも見せたい。
だから、薄絹の向こう側に隠した。
曖昧なシルエットだけを、あなたがたの目に許した。
ねえ、見て。この素敵なものを。
わたしがそうやって示す、薄絹に揺れる影。
あなたはそれに何を見出すだろう。
きっとそれは、あなたの大切なものに似ている。
#大切なもの
いつも、君の嘘ならなんでもわかった。
君はじっと相手を見つめる。それから少し、くちびるの右端が笑う。よっぽど後ろめたいときは、言い終わったあとに、ちょっと強めに息を吸う。
でも、一年で一日だけ。今日だけは、わからない。
エイプリルフールの君は、楽しそうだから。
嘘をつくときの緊張も、こわばりもない日。
ただ楽しげに、どうでもいい嘘ばかり飛び出す日。
だから、わからなくてもいい。今日だけは。
#エイプリルフール
さらさらと流れる水の流れでありますように。
やさしく瞬く星の輝きでありますように。
ふっくらと開く薔薇の花びらでありますように。
するりと頬を撫でる春風でありますように。
あたたかく揺れる灯火でありますように。
ひそやかに微笑う葉擦れでありますように。
愛しい人へ。
たくさんの美しいものが、あなたを訪れますように。
#幸せに