来るか来ないかわからない君を待つために、毎日、部室に顔を出した。
ただ、君の来たとき、当然のようにいるために。
来なくたって構わないのに、来ないなんてわかっているのに。
ただ、君の来たとき、狙ったわけじゃないと言い訳するために。
そんな自分がいじましくて、ばかばかしくて。
でも、そうしたかった。
それ以外、何もできなかった。
扉の開くたび、なんともない顔をする。
期待なんてしてない。期待なんて、してない。
#何気ないふり
それは、月明かりの真下を歩くようなこと。
その光が失われる夜があっても、必ずまた輝くと信じられること。
エンドマークは永遠じゃないかもしれないけれど、あの日の幸せは、わたしの月を照らし続けている。
翳る日も、消えたわけじゃないと知っているよ。
一度終わった物語も、失うわけじゃないと、知っているよ。
#ハッピーエンド
わたしの中が透き通る。
あなたに何も見せたくなくて、透明に透明になる。
恋の赤色、嫉妬の紫。盲目の薄墨に、焦燥の鬱金。
あなたの前には広げられないパレット。
あなたの前では描けないキャンバス。
拙い想いを見つめられると、息ができない。
だからどうか、見なかったことにして。
透明だったことにして。
#見つめられると
ガラスというほど脆くはないな、と君が言う。
ダイヤモンドほど輝かしくもないだろ、と言う。
だから、あんたの心は石英に似てる、と言う。
その時から、わたしは、わたしの心ってそういうものだな、と思っている。
まあ、ついでに言っておくなら、せめて水晶って言ってくれないかな、とも思っている。
それは、なんというか、ロマンの問題として。
#My Heart
白詰草の指輪に託した約束。
忘れないでいてほしかった。
四葉のクローバーを探した冒険。
過去にしないでほしかった。
ラムネの瓶のビー玉に輝いた瞳。
曇らせないでほしかった。
大人になって手に入れたたくさんのものと、失くしてしまったいっぱいのきらきら。
あの頃は、あんなに、早く大人になりたかったのに。
#ないものねだり