新月みたいだな。
それをわざわざ探したりしない。探したところで見つかりやしないのだし。
気づいたらいない。いなかったことに、ふと気づく。
そうやって、いないときにばっかり、気づくんだよ。
わたしにとっての君って、そういう感じ。
君のこと、好きでも嫌いでもない。
でも、君がいない、ってことばかり、気になるんだ。
#好きじゃないのに
この傘はね、内側に雨が降るの。
外はこんなに晴れているけど、この傘の内側はいつだって雨。
悲しくなったら、傘をさしてみるといい。
頬が濡れても、雨のせいだよ。
#ところにより雨
それは傷だよ。
十年前の叶わなかった恋が人生の何より忘れられないなんていうのはね、綺麗な思い出なんかじゃなくて、傷痕なの。人生に後遺症が残ったってことなの。もう、元通りに治ったりはしないの。
あなたはその傷と生きていくんだ。
もう二度と会うことなんてないまま、十年前が百年前になったって、ずっと、一生。
そんなにも狂おしい恋をしたってことを、抱えて生きるんだ。
#特別な存在
わたしが本当に、きみを愛しているかどうかなんて。
交わした約束が本物かどうか、なんて。
わたしにキスしたって、わかるはず、ないでしょう。
嘘つきの魔女がわたしなら。
真実の愛がそこにないなら。
二人のキスで、呪いは解けやしないでしょう。
それなのに、どうして。
どうして、くちびるで確かめようとするの。
#バカみたい
二人でいるのは好きだった。
二人きりになるのは嫌だった。
重ならないわたしたちの、孤独と孤独を知っていた。
互いしかいない場所で、それが響き合う冷たい音。
触れ合うたびに凛と鳴る、一人と、一人。
一人ぼっちは寂しいけれど、二人ぼっちは悲しいね。
同じにはなれないことを確かめ合うのは、切ないね。
#二人ぼっち