やさか

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4/3/2023, 1:16:19 PM

 お前に星をあげよう。
 夜空に輝く星のうちから、どれでも、ひとつだけ。
 そう言われて、僕は天を仰いだ。
 それから、一面の星の中からよくよく選んで、幽かに光るひとつを指さす。
 あんなに小さくて消え入りそうな星でいいのか?
 確かめる言葉に頷く。
 だってあの星は、君の瞳の奥にある光に似ている。
 そんな星は、ひとつだけだ。


 #1つだけ

4/2/2023, 12:24:10 PM

 誰にも見せたくないけれど、誰にでも見せたい。
 だから、薄絹の向こう側に隠した。
 曖昧なシルエットだけを、あなたがたの目に許した。  
 ねえ、見て。この素敵なものを。
 わたしがそうやって示す、薄絹に揺れる影。
 あなたはそれに何を見出すだろう。
 きっとそれは、あなたの大切なものに似ている。


 #大切なもの

4/1/2023, 11:00:06 AM

 いつも、君の嘘ならなんでもわかった。
 君はじっと相手を見つめる。それから少し、くちびるの右端が笑う。よっぽど後ろめたいときは、言い終わったあとに、ちょっと強めに息を吸う。
 でも、一年で一日だけ。今日だけは、わからない。
 エイプリルフールの君は、楽しそうだから。
 嘘をつくときの緊張も、こわばりもない日。
 ただ楽しげに、どうでもいい嘘ばかり飛び出す日。
 だから、わからなくてもいい。今日だけは。


 #エイプリルフール

3/31/2023, 12:21:39 PM

 さらさらと流れる水の流れでありますように。
 やさしく瞬く星の輝きでありますように。
 ふっくらと開く薔薇の花びらでありますように。
 するりと頬を撫でる春風でありますように。
 あたたかく揺れる灯火でありますように。
 ひそやかに微笑う葉擦れでありますように。
 愛しい人へ。
 たくさんの美しいものが、あなたを訪れますように。


 #幸せに

3/31/2023, 9:17:45 AM

 来るか来ないかわからない君を待つために、毎日、部室に顔を出した。
 ただ、君の来たとき、当然のようにいるために。
 来なくたって構わないのに、来ないなんてわかっているのに。
 ただ、君の来たとき、狙ったわけじゃないと言い訳するために。
 そんな自分がいじましくて、ばかばかしくて。
 でも、そうしたかった。
 それ以外、何もできなかった。
 扉の開くたび、なんともない顔をする。
 期待なんてしてない。期待なんて、してない。


 #何気ないふり

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