また今度ね、また次にねという母の言葉はもう信じないことにする。
「また今度行くから、その時に買おうよ」とか言って、面倒になって行かないことが何度もあった。
最初は信じていたけど、今はほぼ信じていない。
泡になりたいというと、思い出すお話がある。
結構前に読んだので、タイトルは覚えていなくて、内容も実際のお話とだいぶ違うかもしれないが、高い身分の女性とその女性の家で下働きをしている男性との身分違いの恋のお話。
二人は駆け落ちをして、見つけた小屋で夜を明かすのだが、朝に男性が女性のために水を汲みに行って小屋に戻ると、女性は鬼に食べられてしまった後で、男性は女性を連れ出したことを後悔して、葉についた朝露が落ちるのを見て、自分もこんな風に消えてしまいたいと思う。
泡になりたいというのは、それと同じような気持ちなのかなと思った。
最近いつも気温が30℃を超えていて、窓を開けると、窓からの熱気がすごい。
すごく夏って感じがする。
父の家庭菜園でとうもろこしが去年よりも採れて、父がスイカを去年よりも買ってきたから、もうすでにたくさん食べている。
いつもよりも夏を満喫しているかもしれない。
パソコンを見ながら、君が何も言わずにゴクゴクとレモン味の炭酸水を飲んでいた。
美味しいのだろうか。
自由に飲んでもいいからと、箱に置かれたいくつかのペットボトル飲料の中から、レモン味の炭酸水を選ぶ。
蓋を開けて飲んでみたが、あまり美味しくなかった。
「美味しい?」
君が無言でゴクゴクと飲んでいるから、味覚が違うんだろうかと思って訊いてみた。
「炭酸抜いて飲んでる」
素っ気なく君が言った。
炭酸の抜き方を知らなかったので、教えてもらって、炭酸を抜いて飲んでみたが、やっぱりあまり美味しく感じなかった。
波打ち際に文字を書く。
ここまでは波は来ないだろうと思って書いていたけど、大きめの波がきて、書いていた文字をさらっていった。
伝えようとは思っていなかったから、ちょうど良いと思って、「何を書いてたの?」と訊かれても、答えないで立ち上がる。