大好きな君に、昨日雑貨屋で買ったプレゼントを渡す。
今月で、俺達は付き合って一年経つ。
サプライズで渡すために、こっそり買っていたのだ。
だけど、君はプレゼントを受け取らず、俺の腕を掴んで背伸びし……キスをした。
「いつもありがとうのキスだよっ」
君は照れた顔で、俺に言った。
君の照れた顔を見て、俺も照れてしまう。
まさか不意打ちをくらうとは……。
プレゼントを受け取った君は、ニコニコと笑う。
太陽の光のような笑顔を見て、俺の心はぽかぽかになった。
赤いタオルと段ボールで作った雛壇。
各段には、鳥の雛達が大きな口を開けながら鳴いている。
これが俺オリジナルのひな祭りだ。
妹を喜ばせるために作ったのだが……全く違うと妹に言われた。
俺の家は貧乏だから、高価なひな人形の代わりに養鶏場で雛を買ったのは間違いだったか?
でも、妹はしばらくするとクスクスと笑う。
他の家とは全く違うひな祭りだけど、妹は笑顔で喜んでくれた。
風が吹き抜け、空を近くに感じる山頂。
産まれた時から身体が弱く、難病で苦しむ妹を救うため、ここへやって来た。
この辺りに、どんな病にも効く薬草が生えているらしい。
長老の話によると、その薬草が生えているのを数十年以上は誰も見ていないと言っていた。
だが、俺にはそんなこと関係ない。
たった一つの希望だから、俺は全力で探すまでだ。
どれぐらい探し続けただろう?
薬草は全く見つからない。
弱気な気持ちになってきたその時、長老が言っていた薬草を発見した。
一本だけ、他の草に混じりながら生えている。
……崖の近くに。
落ちないよう、必死に手を伸ばす。
なんとか、ギリギリ手が届き、薬草を掴んだが、同時に崖が崩れ、身体ごと下へ落ちていく。
もう駄目だと思ったが、途中の木に引っかかり、なんとか助かる。
薬草は……よかった、無事だ。
死に物狂いで崖を登り、ふらふらになりながら村へ戻った。
村の人に薬草を渡し、妹が寝ている俺達の家へ届けてもらう。
これで……妹は……助かる。よかった……。
足に力が無くなり、地面に崩れ落ち、身体ごと倒れ込む。
俺の身体のあちこちから、血が出ている。
目の力も入らなくなり、目の前が暗くなっていった。
あれも欲しい、これも欲しい。
手に入らなければ入らないほど、欲しくなってしまう。
どうしてこんなに欲望が止まらないのだろうか?
今日も街へ出掛け、目で物色する。
よし、今日はあの子にしよう。
跡をつけ、人が少なくなった所で声を掛ける。
だけど……。
「悪いけど、俺、おばさんに興味ないから」
青年は苦笑いしながら、去っていく。
私こう見えてまだ三十歳なんだけど!
どうやら、今日も失敗で終わったらしい。
一ヶ月前から若い男に声を掛けているが、一度も成功していない。
逆ナンがこんなに難しいとは思わなかった。
電車の窓から見える知らない街。
今日は仕事が休みなので、行ったことない所へ行こうと思い、電車に乗り込んだ。
毎日同じことの繰り返しで、遠くへ行きたくなることは誰にでもあると思う。
住んでる街から離れ、全く新しい風景を見ているだけでワクワクする。
次の駅で降りて、街を探索してみよう。
きっと楽しい気持ちでいっぱいになるはずだ。
そう意気込み、財布を取り出して残金を確認する。
……手持ちが少なく、帰りの切符が買えるギリギリの金しかない。
電子マネーの残金も確認するが、10円しか残っていない。
「はあ……」
深い溜め息を吐き出し、結局街を探索することなく帰りの切符を買って、再び電車に乗り込む。
これでは電車に乗っただけじゃないか。
さっきのワクワクの気持ちを返してほしい。
逆再生する風景を見ながら、住んでる街へと戻っていった。