外からの光をカーテンで遮断している自室。
部屋着でベッドに寝転び、スマホの画面を開く。
私は現実逃避をするために、ネット世界へやって来た。
現実はどうしてこんなにもクソなのだろう?
嫌なことが積み重なると、どうしてもネガティブ思考になってしまう。
だけどネット世界では、好きなものだけを見ることが出来る……はずなのに。
なぜか今働いている職種の広告が、嫌がらせのように沢山表示される。
私はこんなものを見るためにネット世界へ来たんじゃない。
最近あった嫌なことを思い出してしまい、思わずスマホを放り投げてしまった。
そしてまた、現実へと戻ってきてしまう。
立ち上がり、カーテンを開けると、外から太陽の光が射し込んでくる。
眩しい……あまりにも眩しい。
こんなに外は明るくて眩しいのに、私は暗い部屋から外へ出る気が起きなかった。
太陽に手が届きそうなくらい気持ちが良い快晴の空。
君は今、どこで何をしているのだろう?
もしかしたら、この空をどこかで見ているのかもしれない。
世界中で自然災害が大活発化し、地上が割れ、海も割れてしまった。
そのおかげで、別々の場所で暮らしていた俺と彼女は、会うことが難しくなってしまう。
なんとしても彼女と会う方法を探さないと……。
このまま永遠の別れなんて、絶対に嫌だ。
空に向かって、右手を伸ばす。
彼女もどこかで空を見上げていると信じて、光り輝く太陽をギュッと右手で握った。
分厚いモクモクの煙のような雲が支配している空。
見ているだけで、こっちも気が重くなり、気だるい気分になってしまう。
太陽はどこへ行ってしまったのだろう?
雲に隠れてないで、出てきてほしい。
折角太陽の光を浴びに外へ出たのに……。
いつまで待っても、太陽は姿を現さない。
もう諦めて家へ戻ろうとした瞬間、暖かい光が背中に当たる。
振り返ると、雲と雲の隙間から、僅かな太陽の光が射し込んでいた。
どこまでも広がる白い雲。
俺は交通事故で死んでしまい、早めの天国へ来てしまった。
「まだここは天国ではないですよ。ここで天国行きか地獄行きか判断します」
一匹の天使が近づいてきて、そう言った。
手には紙を持っていて、俺と紙を交互に見ている。
「……残念だけど、君は地獄行きだね」
「え!?なんでだよ!罪を犯してないのに!」
「君は蚊を千匹以上殺している。蚊とはいえ小さな命だ。その命を沢山奪ったのがよくなかったね」
「そ、そんな……」
蚊を叩いただけで地獄行きになるなんて……。
そんなことがあっていいのか?
「それじゃ、地獄へいってらっしゃ〜い!」
天使は俺に向かって手を振る。
足元の雲に穴が開き、俺は納得出来ないまま、真下へ落ちていった。
自宅に届いた一枚の手紙。
送り主の名前は、相変わらず書いていない。
中身の手紙に書いているのは「Love you」の文字だけ。
これで今日を含め、三十通目。
手紙は一ヶ月前からポストに入れられ始めた。
俺がここへ引っ越して来た日からだ。
最初はイタズラかと思って気にしなかったが、一ヶ月も続くと不気味になってくる。
心当たりはないし、一体誰が……。
犯人を捕まえるべく、ポストに手紙を入れられる瞬間を待ち伏せすることにした。
深夜1時、ウトウトしかけた時に、ポストの蓋が開く音がしたので急いで外へ出る。
そこに居たのは……一人の若い女性だった。
「君が毎日手紙を入れてたのか?」
そう問うと、女性はあたふたしながら口を開く。
「私、あなたを一目見た時から好きだったんです。直接伝えづらくて、手紙を入れてました……ごめんなさい」
女性は頭を下げて謝ってくれた。
反省してくれてるみたいだし、これ以上責める気はない。
「ちなみにですけど、どこの方ですか?」
女性に問うと、女性は俺の家の隣に指を指す。
隣の家は確か……誰も住んでいない空き家のはず。
「私、借金返済に困って自ら命を絶ったんです。隣の人に助けを求めても助けてくれませんでした。私が自殺したあと引っ越したらしいけど、こうしてまた、あなたが来てくれて嬉しい」
女性をよく見ると、肌が真っ白で、首にはヒモで強く絞められたような跡が付いていた。