彼女のシルエットの奥で光り輝く太陽。
彼女の写真を撮るつもりが、太陽が主人公になってしまった。
「闇の女王みたいでかっこいいね」
彼女は俺が撮った写真を見て言った。
闇の女王……か。
「俺は太陽を操る太陽の女王だと思うけどなぁ。君はいつもキラキラしていて眩しいし」
彼女は太陽の女王のほうがぴったりだと思う。
俺にとっての太陽は……君だから。
「ふふ、ありがと。じゃあもう一枚撮ってくれる?」
「ああ、もちろんさ」
彼女は太陽に向かって手を伸ばす。
まるで太陽を操るかのように。
今度は逆光にならないよう、カメラを構え、シャッターを押した。
昨晩、こんな夢を見た。
普段着ないド派手な衣装を着て、ミラーボールの下で踊り明かしている夢。
「イヤッホォォォ!!!フゥゥゥウウウ!!!」
人生で一番の超ハイテンションで俺は叫んでいた。
……涙を流しながら。
日頃ストレスが溜まりまくっているから、こんな夢を見たのだろう。
現実でも夢みたいなことをやったら、ストレス発散出来るだろうか?
「イヤッホォォォ!!!フゥゥゥウウウ!!!」
試しに誰もいない自室で、ド派手な衣装を着て、この日のために買ったミラーボールの下で叫びながら踊った。
だが、だんだんと虚しくなってきて……涙が出てしまう。
なにをやっているんだ俺は……。
夢と同じことをしても、疲れるだけだった。
行列が出来ている開店前の雑貨屋。
なんで行列が出来ているのだろう?と気になり聞き耳を立ててみると、どうやらこの雑貨屋にタイムマシンが置かれるらしい。
……雑貨屋にタイムマシン?
気がつけば、俺も行列に並んでいた。
だって、気になるじゃないか。
開店時間になると、吸い込まれるように客が雑貨屋へ入っていく。
タイムマシンって、やっぱり時間旅行が出来るのだろうか?
そもそもなんで雑貨屋にタイムマシンが置かれているのか気になる。
考えている間に行列は前へ進んでいき、タイムマシンを見終わった客が雑貨屋から出てきた。
「はぁ……」
「なんか、がっかりだな」
溜め息をつきながら去っていく客。
タイムマシンを見て、がっかりするとは……。
ますます気になってきたぞ。
遂に順番が回ってきて、雑貨屋に入り、タイムマシンの元へ向かう。
「こ、これは……」
俺より少し大きい機械。
表には、時間を自由に移動することが出来る針。
タイムマシンではなく、少し変わった形をした巨大な時計のタイムマシーンだった。
夜空に浮かぶ真ん丸の満月。
月の光のパワーを受け、力がみなぎってる……気がする。
いや、そんな弱気になってはダメだ!
今日は特別な夜になる予定……いや、なるんだ!
同じ職場の田中さんに告白して、恋人になるのだから。
田中さんとは、仕事が終わってから近くの公園で待ち合わせをしている。
一足早く公園に来たのだが……。
三十分経っても、田中さんは来ない。
どうしたのだろう?
まさか事故に巻き込まれたんじゃ……。
念のため、連絡してみるか。
「ごめ〜ん!お待たせ〜」
スマホで連絡しようとしたら、田中さんの声が聞こえた。
「いや!俺も今来たところ……で」
スマホを持ったまま顔を上げると、田中さん……と男性がいた。
……誰だ?この男性は。
「紹介するね。この人は坂井君。私達、最近付き合い始めたの。帰り道同じで一緒に来ちゃったけど……迷惑だったかな?」
最近付き合い始めた坂井君?
突然のことで、頭の中が真っ白になる。
「い、いや全然!は、はははは……はぁ……」
今日は、忘れられない特別な夜になってしまった。
目の前に広がる青い海。
遠い昔、俺のご先祖様である浦島太郎は大亀に誘われて、海の底にある竜宮城へ連れていかれ、乙姫に出会ったという。
"あんな場所に人間がいるなんておかしい。乙姫は海底人に違いない。海の底には海底人がいると地上の皆に伝えたかったが、乙姫がなかなか地上へ帰してくれなかった。ようやく帰ることが出来たが、地上は数百年過ぎていた。どうやら海底人は時間を操ることが出来るらしい。海底人のことを地上の皆に言ったが誰も信じてくれなかった。あれは夢ではない、本物だ。僕はこの事を日記に記し、乙姫から貰った玉手箱に仕舞うことにする。子孫の誰かが読んでくれることと、信じてくれることを祈ろう"
ボロボロの玉手箱に入っていた浦島太郎の日記に、そう書いていた。
子孫である俺は、ご先祖様の無念を晴らすため、こうして海の前で大亀が現れるのを待っているのだ。
竜宮城へ行くために。
「……あなた、浦島太郎の子孫?」
「えっ……」
後ろを振り向くと、ピンクの衣を着た美しい女性が立っていた。