たーくん。

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9/30/2025, 10:16:05 PM

魔王を倒し、静まり返った魔王の間。
これで、自由に……。
「魔王をついに倒しましたね!」
「ああ!苦戦したが最後はあっけなかったな!」
「きっと勇者さんの力に圧倒されたのでしょう」
仲間達はボロボロになった姿で、喜びの声をあげる。
「しかし、これで旅は終わりか……なんだか寂しくなるな」
「何言ってるんですか。世界に平和が戻ったんですよ?それに、またいつでも会えますよ」
「ああ、そうだな」
「王様の所へ戻りましょうか。勇者さん」
突然呼ばれて、思わずビクッとしてしまう。
「……あ、ああ」
「勇者さんお疲れですね。王様に報告したら、ゆっくり休みましょう」
仲間達は、魔王の間を後にする。
旅は終わりか……ふふ……。
勇者にトドメを刺される瞬間、我と勇者の身体を入れ換えてやった。
我を追い詰めた勇者の仲間達を殺し、世界を滅ぼすまで、旅は続くのだ。
勇者の身体で復讐するのが楽しみだな……ふふふ……。
まずは王を始末することにしよう。
我は興奮を抑えながら、勇者の仲間達の後を追った。

9/29/2025, 10:12:23 PM

色が無くて、見てもつまらないモノクロの世界。
でも、今は色鮮やかな世界が見える。
これも全て、マスターのおかげだ。
マスターは壊れかけていた私を拾って、直してくれた。
色がつくだけで、こんなにも世界が変わる。
綺麗で、美しくて、ずっと眺めていたい。
「自分の顔を見てごらん」
マスターから、手鏡を渡された。
言われたり通り自分の顔を見ると、私にも色がついていて、笑っている。
「これからも一緒に色んな色を見ていこう」
マスターの優しい声を聞いて、私の頬に、ほんのり赤い色がついた。

9/28/2025, 10:11:03 PM

人間の像が大量に並んだコレクションルーム。
私達人間には永遠なんてないけれど、像にすることで永遠になる。
これでずーーっと一緒だね♪
……あれ?この子達は永遠でも、私は永遠じゃない。
これじゃ……不公平だ。
私も、像にならないと……。
「ふふ……ふふふふふ……」
私は永遠を求めて、作業ルームへ向かった。

9/27/2025, 11:45:34 PM

真っ黒の空のキャンバスに描かれた輝く星々。
今日も残業で帰りが遅くなり、時折空を見て家へ帰っていた。
綺麗だなぁって思っていると、見ていた星空が歪み始める。
なんでだろう?と思っていたら、いつのまにか私は泣いていた。
どうして毎日遅くまで残業しているのだろう?
どうして毎日こんなに気を遣わなきゃいけないのだろう?
どうして一人で夜道を歩いているのだろう?
どうして?が頭の中に次々と浮かび上がり、頭が破裂しそうだ。
無理は……よくない。
今度有給を取って、のんびりしよう。
でも、人手が足りないから有給取れるか分からないや……はは。
今の仕事を辞めて、別の仕事を探したほうがいいかもしれない。
私が、壊れる前に……。
自分の時間は大切だと、改めて思った。

9/26/2025, 11:22:56 PM

コーヒーカップから元気よく飛び出して踊っている白い湯気。
朝の食後は、やっぱり熱いコーヒーに限るよな。
よし、冷めないうちに……。
「パパー!きがえてつだって!」
幼稚園児の息子が、パジャマ半脱ぎ状態でやってきた。
「どうやったらそんな起用な脱ぎ方が出来るんだ?そんな子にはくすぐりの刑だぞ~!」
「きゃー!」
俺がくすぐりポーズをしながら近づくと、息子はきゃーきゃーとはしゃぎながらリビングを走り回る。
「二人共~!遅刻しちゃうから早く準備して!」
妻が台所から顔を出し、俺達に言った。
「は~い」
「はい……」
朝からママ怪獣を怒らせたくないので、俺達は素直に従う。
息子の着替えを手伝い、俺も会社へ行く準備をして……ん?何か忘れているような……。
テーブルの上には、コーヒーカップが乗っている。
そうだったそうだった。俺はコーヒーを飲もうとしていたんだった。
あとは家を出るだけなので、椅子に座って熱々のコーヒーを味わうことにしよう。
だが、白い湯気は踊り終え、コーヒーはぬるくなっていた。

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