夜空に散らばっている星達。
夏の夜空は、星が多く見える。
しばらく見ていると、流れ星が空を駆けた。
目で星を追いかけるが、すぐに消えてしまう。
もう少しゆっくり駆けてくれたらいいのに。
そうすれば、願い事も出来るし、観察することも出来る。
再び流れ星が駆けるのを待つが、なかなか現れない。
暑いし、そろそろ部屋に戻ろうかな……。
と考えていると、流れ星が空を駆けていった。
……また願い事が出来なかったじゃないか。
どうやら、流れ星との追いかけっこはまだまだ続きそうだ。
頬を両手で軽く叩き、気合いを入れて再び流れ星が駆けるのを待った。
結局、このあと流れ星が駆けなかったのは言うまでもない。
青くて、どこまでも広がる朝の海。
浜辺に何度も打ち寄せる波を音を聞きながら、海を見ていた。
俺は人生に行き詰まったら、こうして海からパワーを貰っている。
学校でいじめられて、どうしようか悩んだ時。
仕事でうまくいかず、転職するべきか悩んだ時。
彼女に浮気しているのを目撃して、別れるか悩んだ時。
親が急病で亡くなって、心が空っぽになった時。
色んな時に、海を見て癒され、パワーを貰った。
人生は予想出来ない沢山のイベントが起きる。
まさに、波乱万丈だ。
でも、それらを乗り越えてきたから、俺はここに居て、今を生きている。
一瞬、風が強く吹く。
波が大きくなり、浜辺に大きい音を立てながら打ち寄せる。
まるで、俺を元気づけるかのように。
今日も頑張ろう、生きようと、俺は思った。
物が散乱している埃っぽい家の倉庫。
少しは整理しよう思い、箱や段ボールを一旦外へ出していく。
途中で、見覚えのある箱を見つけた。
子供の頃によく使っていたおもちゃ箱だ。
開けると、綺麗な状態でおもちゃ達は眠っていた。
おもちゃ達の一番上に、小さい飛行機が置かれている。
昔、駄菓子屋で買って、よく遊んだ発泡スチロールの飛行機。
確か……ソフトグライダーって名前だったっけ。
結構派手なデザインで、実際にこんな飛行機が飛んでいたらすごく目立つだろう。
飛行機を手に取り、倉庫から出る。
今日は雲一つない青空で、絶好の飛行日和だ。
空に向けて、飛行機を飛ばした。
「飛べ!」
飛行機は勢いよく空に向かって飛ぶが、すぐに落ちてしまう。
あれ?昔はもっと飛んだんだが……。
それから何度も何度も飛行機を飛ばし、気がつくと一時間経っていた。
倉庫の整理は……今度でいいか。
昔遊んだおもちゃは、今遊んでも時間を忘れるぐらい楽しかった。
のんびり出来て居心地が良い我が家。
いつも家事を頑張ってくれている妻に、ゆっくりしてもらうため、今日は妻の代わりに俺が家事全般をやろうと思っている。
妻の休日……ってなんか危ない香りがするから、Special dayと呼ぶことにしよう。
洗濯物を干そうとしている妻に、声をかける。
「俺が家事やるから、今日はゆっくりしてくれ」
妻は洗濯物を持ったまま振り返り、首を振る。
「ううん。あなたは毎日仕事頑張ってるから、ゆっくりしてて」
女神のように微笑む妻。
笑顔が太陽の光より眩しすぎて、思わず後退りしてしまう。
「わ、分かった。もし手伝えることがあったら、いつでも言ってくれ」
「あなたがそばに居てくれるだけで十分だよっ」
……俺の妻が可愛すぎる。
こうして妻と一緒にいる日々を、Special dayと呼ぶべきだと思った。
風がふくたびにゆれる木。
今日は、ともだちといっしょに、こうえんへあそびに来た。
かげふみをすることになり、ぼくはジャンケンにまけて、オニになってみんなをおいかける。
なかなかおいつかなくて、みんなはどこかにかくれてしまった。
風がふいて、木がゆれる。
木の下を見ると、かげもいっしょにゆれていて……だれかのかげが立っていた。
あんな所にいたんだ。よーし。
ゆっくり近づいて、かげをふんだ。
「見つけた!」
「へっへっへっ……」
かげが、ぼくにふまれてわらっている。
だれのかげをふんだのだろう?
聞こうとしたけど、声が出ない。
あれ?だれかのかげが走っていく。
かげのぬしをかくにんすると……ぼくだった。
どうして?ぼくはここにいるのに。
うごこうとしても、うごけない。
「君のからだ、もらっていくよ。ふふふ……」
だれかのかげが、ぼくのからだをうばって、走っていく。
かえしてよ……ぼくのからだ……。
ぼくは、地面で見ていることしかできなかった。