たーくん。

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6/12/2025, 11:20:21 PM

人で埋め尽くされたライブ会場。
全員、私の単独ライブを見に来てくれたファン達だ。
現在全国ツアーの真っ最中で、今日は大阪に来ていた。
数年前の私が、今の私を見たら、きっとすごく驚くだろう。
全国ツアーが出来るほど、私は成長したから。
私はステージの真ん中に立ち、マイクでファン達に呼び掛ける。
「皆ぁーーー!私に好きなもの教えてくれるーーー?」
私の呼び掛けに、ファン達は「いいよーーー!」と答えた。
「じゃあ私がI love?って聞くから、そのあとに続いて好きなもの言ってね!いくよ!I love?」
「たこ焼きーーー!」
「551の肉まんーーー!」
「阪神ーーー!」
「串かつーーー!」
「通天閣ーーー!」
ファン達は、各々好きなものを叫んでいる。
「なんでやねんっ!私の名前を言ってよーーー!」
私がそう言うと、ファン達は笑い、会場が湧く。
これはライブでいつもやるコールアンドレスポンス。
今日は大阪でライブをしているから、ファン達は大阪にある物を言ってくれたみたい。
「皆、大阪バージョンで答えてくれてありがとう!それじゃ次の曲いくよーー!」
私はマイクをぎゅっと握り、ファン達に感謝を込めて歌った。

6/11/2025, 11:23:01 PM

どんよりとした空から大量に落ちてくる雨粒達。
確か今日は傘を持ってきたはずなのに、私の傘がどこにもない。
多分、あの子達がどこかに隠したか、持っていったのだろう。
なぜか私だけをいじめてくる同じクラスのあの子達。
頑張って笑って誤魔化してるけど、そろそろ限界かもしれない。
今日は雨でよかった。
皆が傘をさして帰ってる中を、私は雨に打たれながら歩く。
雨粒達が私の負の感情と涙を洗い流してくれる。
ずぶ濡れで帰ったら、お母さんに怒られるだろうなぁ……。
傘無くしたし、ほんと、いいことがない。
「寺田さん、風邪ひくよ?」
誰かが、私を傘の中に入れてくれた。
横を見ると、同じクラスの田中さんが、心配そうな顔で私を見ている。
「で、でも私……」
こんな所をあの子達に見られたら、田中さんもいじめられるかもしれない。
傘から出ようとしたら、田中さんも一緒についてくる。
「気にしないで。私が勝手にやってることだから。それに、寺田さんのことが気になってたから」
優しい声で私を心配してくれる田中さん。
さっきの涙とは別の涙が出そうだ。
「ありがとう……田中さん」
「うんっ、一緒に帰ろっ」
私は雨音と優しさに包まれながら、田中さんと一緒に帰った。

6/10/2025, 11:13:08 PM

太陽が元気過ぎる快晴の空。
そんな太陽の下で、俺は歴史的瞬間を目の当たりにしようとしている。
突然強風が吹き、前から歩いてきた若い女性のロングスカートが……大きく捲れていく。
スカートは膝を越え、太ももが露になる。
なんて美しい足なんだ……。
スカートの捲れ方といい、もし今スケッチブックと鉛筆を持っていたら、きっと素晴らしい絵が描けただろう。
スカートは太ももを越え、ピンクの──。
「しゃがみながらどこ見てるのよ!このスケベ変態野郎!」
女性は持っていた鞄をバットのように振り、俺の顔面に直撃した。
俺は地面に倒れ、女性はスカートをひらひらと揺らしながら去っていく。
もう少しで、歴史的瞬間を目の当たり出来たのに。
倒れながら空を見ると、太陽が俺を見て、ギラギラと笑っていた。

6/9/2025, 11:20:30 PM

大地は荒れ果て、海は毒沼に変わってしまった世界。
生き物は我以外、存在しない。
どうしてこの世界は、こんなにも何も無いんだ。
一代目魔王は世界を滅ぼしたあと、することがなくなり、最終的に自ら命を絶った……と、我の記憶の中に残っている。
我は二代目魔王として、この世界に生まれたが、一代目魔王と状況は変わってない。
さて、これからどうするべきか?
滅んだ世界で一人は退屈だ。
一代目魔王と同じ道は辿りたくない。
しばらく世界を眺めながら考えていると、一つの答えに辿り着く。
……世界を再生させる。フハハ。
魔王である我が、神のような考えをして、思わず笑ってしまう。
まあいい。世界を再生させ、生き物を復活させたあと、再び我の手で滅ぼしてくれるわ。
海に手を向け、まずは毒々しい海から浄化を始めた。

6/9/2025, 1:16:58 AM

銀色のアスファルトが続く長い一本道。
昔は土の道だったのに、アスファルトの道は固くて歩くたびに足が痛む。
道の周りにあった草木も家へと代わり、時代の流れを感じる。
君と歩いた道は、こんなにも変わってしまったよ。
初めて一緒に歩いたのは……学生の頃か。
君が学校から出てくるのを待ち伏せして、一緒に帰ってたな。
そんな私を、君は嫌な顔をせず、いつもニコニコしていた。
私は、あの笑顔に惚れたんだと思う。
一緒に帰ることが当たり前になり、いつの間にか手を繋ぐようになり、私達は結ばれた。
それからも、この道をよく一緒に歩いたもんだ。
私達の思い出の道だから、と言って。
だが、君は先に逝ってしまった。
君がいなくなってから、心にぽっかりと穴が開き、毎日物足りない生活を過ごしている。
君の存在が、すごく大きかったんだと思う。
私も、早く君の所へ……。
「あっ!おじいちゃん、またかなしいかおしてる!」
「わたしたちがいっしょだから、そんなかおしないで!」
孫達が、私の右手と左手をぎゅっと握る。
小さい手だが、力強さと優しさを感じた。
「おじいちゃんわらった!」
「えがおがいちばんだよ!」
「そうだな。ありがとう、二人共」
どうやら、私はまだ君の所へ行けそうにないみたいだ。
私は孫達と一緒に、長い一本道を笑顔で歩いた。

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