たーくん。

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6/8/2025, 1:54:11 AM

大勢の人で賑わう日曜日の大型ショッピングモール。
今日は、幼馴染みの岩橋と一緒に買い物に来ていた。
俺とじゃなくて、女友達と来ればいいのに。
本人曰く、友達が少ないし、俺だと気を遣わなくていいかららしい。
てか、高校二年の年頃の男女がこうして一緒に買い物をするのは、デート……だよな?
……なにを考えているんだ俺は。
そんなことを考えている間に、前を歩いていた岩橋がいつの間にかいなくなっていた。
どこへ行ったんだ?あいつ。
周囲を見渡すと、岩橋はショーウィンドウの前でなにかを見ていた。
近寄って、背後から声をかける。
「なにをそんなに熱心に見てるんだ?」
「うん」
返答が適当になるほど、なにかに夢中になっている岩橋。
ショーウィンドウの中には、真っ白のウェディングドレスが飾られていた。
肩が丸出しで、色っぽいドレスだ。
岩橋は花嫁に憧れる夢見る少女のように、ウェディングドレスを見つめている。
「お前にはまだ早いと思うぞ」
「うん……まずは相手を探さないとだね」
ショーウィンドウに映る岩橋と、目が合う。
いつもの岩橋とは違い、色っぽい目をしていた。
トクンと、鼓動が跳ねる。
幼馴染みにときめいてどうするだ、俺。
「まだ買う物あるんだろ?さっさと行くぞー」
「あっ!待ってよー!」
俺は逃げるようにその場から立ち去る。
まさか岩橋が、俺のことを……ね。
「ちょっとー!置いてかないでよー!」
岩橋の声を聞くたびに、俺の歩く速度は上がっていった。

6/6/2025, 11:29:43 PM

目の前に広がる初めての世界。
事前にここへ行こうとか、こうしてから行こうとか、そんなことは決めなくていい。
自由気ままに、好きな所へいけばいいんだ。
さあ行こう!
私は軽やかな足取りで、新しい地へ一歩踏み込んだ。

6/5/2025, 11:27:24 PM

突然の大雨で、沢山の水たまりが出来た学校の帰り道。
今は雨が降っていたのが嘘かのようにカラッと晴れている。
今日はずっと晴れって言ってたのに、なんでいきなり降るかなぁ。
しかも、傘持ってない時に限って。
おかげで靴の中までびしょびしょだ。
まだ夏の制服を着てなくてよかった。
濡れたら色々透けちゃうからね……。
近くにあった大きな水たまりを覗くと、私の後ろで、私を嘲笑うかのような青空が映っていた。
なんだかムカついたから、ジャンプして両足で思いっきり水たまりを踏む。
どうせ靴の中はびしょびしょだし、今の私は無敵だ。
水たまりに映る青空は、びちゃっ!と音を立てながら歪むが、すぐ元通りに戻る。
ぽつ、ぽつ、と何かが水たまりに落ちてきた。
空を見上げると、雨粒が次々と落ちてきて、やがてぽつぽつからザーザーの本降りへと変わる。
まるで、私が水たまり越しに空を踏んだ仕返しをするかのように。
「なんで晴れてるのに雨が降るのよ!ばかぁー!」
私は空に文句を言いながら、走って帰った。

6/4/2025, 11:15:40 PM

退勤ラッシュで人が多い地下鉄の長い通路。
壁に、ドラマの宣伝ポスターがデカデカと貼られていた。
白い文字で“恋か、愛か、それとも“と、キャッチフレーズが書かれている。
ポスターには見つめ合ってる男女が映ってるから、多分恋愛ドラマだろう。
俺が、それとものあとに言葉を入れるとしたら……“金か“だな。
最初は金目的で近づく二人だが、次第に惹かれ合っていく。
最終回では愛か金か、どっちか選ぶことになるんだろうな。
恋はどっかにいったけど……まぁ、いいか。
今日から始まるドラマみたいだし、見てみることにしよう。
夜、ドラマが始まり、オープニングで正方形のマットの周囲にロープが張られたリングが映る。
「俺は恋も愛もいらねぇ!女だろうが容赦しない。顔にパンチを打ち込んでやる!勝利こそが全てだ!」
恋愛を捨てた主人公の熱血ボクシングドラマだった。

6/4/2025, 3:11:10 AM

たいようのひかりがまぶしいそら。
となりには、いもうとがブランコをこいでいる。
おやが、さいこんっていうのをして、ぼくたちはきょうだいになった。
「おにいちゃん!これからずっといっしょだよ!やくそくだよ!」
たいようのような、げんきいっぱいないもうと。
やくそくなんてしなくても、ぼくは、いもうとといっしょにいるつもりだった。

俺と妹は高校生になり、お互い異性として意識し始めた頃。
父さんと母さんは離婚することになった。
しょっちゅう喧嘩してたし、時間の問題だったかもしれない。
俺と妹は兄妹ではなくなり、一緒に住めなくなったが、高校は同じなので会うことは出来る。
休み時間に話したり、一緒に寄り道しながら帰ったりして、妹との高校生活を過ごす。
俺は妹を異性として、更に強く意識するようになった。

高校卒業後、俺はすぐに就職した。
二人で暮らしていけるように、ずっと一緒に居るために。
父さんとおばさんには反対されると思ったけど、俺達の関係に気づいていたらしい。
だから、すぐに認めてくれた。
「これからもずっと一緒だよ!約束だよ!」
太陽のような、元気いっぱいな彼女。
だけど、少しだけ不安げな曇り顔をしている。
「約束なんてしなくても、俺はずっと君のそばにいる。絶対に離れないから」
「うんっ!ありがとう!大好き!」
彼女の顔がパァっと明るくなり、快晴になる。
俺は彼女の笑顔を浴びて、自然と笑みが溢れていた。

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