たーくん。

Open App
3/20/2025, 11:57:10 AM

たくさんのひとがあるいていて、めがまわりそうな、おおきいデパート。
さっきまでおかあさんと、おとうさんと、おにいちゃんといっしょだったけど、たんけんしていたら、わたしだけになっちゃった。
みんな、どこにいるのだろう?
まわりにいるのは、しらないひとばっかりで、すこしこわい。
「うぅ……おにいちゃん……」
かなしくなってきて、したをむく。
ゆかが、だんだんぐにゃぐにゃになってきた。
「あっ!いたいた!こんな所にいたのか!」
まえから、おにいちゃんのこえがきこえてくる。
かおをあげると、目の前でおにいちゃんが、ぜぇぜぇいいながらたっていた。
「はぁ……はぁ……はぁぁ……つっかれたー」
「おにいちゃんっ!」
おにいちゃんのズボンに、しがみつく。
わたしのために、つかれるまで、いっしょうけんめいさがしてくれていたんだ。
「離れるなって言っただろ?まったく……」
「ごめんなさい……」
「反省してるなら良し。ここは人が多いし、怖くて泣いてたんじゃないか?」
「な、ないてないもんっ!」
「はは、そっか。ヨシヨシ」
おにいちゃんは、わたしのあたまをやさしくなでてくれた。
さっきまでこわかったきもちが、だんだんとなくなっていく。
「あっちで母さんと父さんがいるから、さっ、行こ」
「うんっ!」
わたしはおにいちゃんといっしょに、てをつなぎながら、おかあさんとおとうさんのところへむかう。
おにいちゃんは、わたしがころばないように、わたしにあわせてゆっくりあるいてくれたことが、すごくうれしかった。

あれから、十年後。
「こんな所にいたのか。お前は相変わらず風船のようにどこかへ飛んでいくやつだな」
「ごめんなさい……でも、お兄ちゃんはいつも探しに来てくれるよね。小さい頃から」
「まぁ……お前は妹だからな」
少し照れくさそうにしているお兄ちゃんが、少し可愛い。
「ありがとお兄ちゃん、お母さんとお父さんの所へ行こっ!」
私はお兄ちゃんの手を握り、お兄ちゃんを引っ張る。
「お、おいっ!もう手を繋ぐ歳じゃないだろう俺達は」
「兄妹だからいいのっ!」
「ったく……しょうがないなぁ」
なんだかんだ言いながらも、お兄ちゃんは手を握り返してくれる。
「そんな優しいお兄ちゃん、好きだよ」
「ん?なんか言ったか?」
「んーん!なーんにもっ!」
私はお兄ちゃんと手を繋ぎながら、お母さんとお父さんの所へ向かう。
お兄ちゃんは昔と変わらず、私の歩幅に合わせて歩いてくれた。

3/19/2025, 12:16:06 PM

赤色灯がチカチカ点滅し、サイレンの音が響き渡る大渋滞の車道。
どうやら、事故があったらしい。
パトカーや救急車が止まっていて、人だかりが出来ている。
さっき通った時は、事故は起きていなかった。
もし、タイミングが悪かったら……と思うと、ゾッとする。
それにしても、どこにもあいつはいないじゃないか。
忘れ物をしたと言い、取りに戻った友達。
電話しながら探しているが、どこにもいない。
「なぁ、どこにいるんだよ?まさかあの人だかりに混ざってないよな?」
「ここだよ、ここ」
「どこだよ」
「上」
「上?」
見上げると、歩道橋があり、橋の真ん中で誰かが手を振っている。
「なんだそこにいたのか……ん?」
手を振っているのは友達だったが、頭から血を流し、服が赤く染まっていた。
俺は急いで歩道橋の階段を駆け上がり、友達の元へ向かう。
だが、橋の上には、誰もいなかった。
「おい!どこにいるんだよ!」
電話はいつの間にか切れていて、ツーツー音だけが虚しく鳴り続く。
「どこ行ったんだよあいつ……」
橋から下を覗くと見えたのは、頭から血を流しながら車道で倒れている友達。
警察の話によると、友達は事故に遭い、即死だったらしい。
……じゃあ、俺と電話してた、手を振っていたあいつは……誰だったんだ?

3/18/2025, 12:40:39 PM

目の前に広がる果てしない海。
俺は彼女と一緒に海に来ていた。
やっぱり、海はいいな。
見ていると落ち着くし、潮の香りと波の音が心海良い。
「俺、海がすごく好きでさ。昔からよく来てるんだよ」
「ふぅ~ん……ねぇねぇ」
彼女は、俺の目の前に立つ。
海が見えなくなり、視界に彼女だけが映る。 
「私のこと、好き?」
海に負けじと、俺にアピールしてきた。
「ああ、好きだよ」
「私はね……大好きっ♪」
照れながら言う彼女の姿がすごく可愛くて、胸がドキドキする。
しばらく見つめ合い、互いに吸い込まれるように顔が近づき、そのまま唇を重ねた。

3/17/2025, 1:12:55 PM

俺の前で走り続ける理想の自分。
手を伸ばしても、届かない。
追いつこうと速度を上げるが、追いつけない。
それどころか、距離がどんどん離れていく。
「くそっ……!うわぁ!」
なにかに躓き、豪快に転ける。
理想の自分は俺を置いたまま走り続け、姿が見えなくなってしまった。
理想が高すぎたのだろうか?
いつかなれると思っていたけど、やっぱり……。
いや、まだやり直せるはずだ。
来た道を少し戻れば……。
立ち上がって、振り返ると、何もない真っ暗な闇で、道なんてなかった。

3/16/2025, 12:51:25 PM

窓から太陽の光が射し込み、ポカポカしている昼休憩の廊下。
俺はトイレへ向かって歩いていると、どこからか甘い香りがした。
廊下の窓は開いてないから、外からではない。
教室で誰かがバームクーヘンを焼いて……いや、そんなことを学校でする奴はいないだろう。
じゃあ、一体どこから?
よく匂いを嗅ぐと、俺がトイレへ向かう方向から段々と甘い香りが近づいてくる。
……前から、女の子が歩いてきた。
流れるような黒い髪、顔が小さくて、可愛らしい女の子。
スカートをひらひらさせながら、こっちへ歩いてくる。
「こんにちは」
女の子は俺に挨拶してきた。
「あ、ああ。こんにちは」
近くで見ると可愛らしさが増して、思わず胸が高鳴る。
「ふふ……」
女の子は微笑みながら、俺の横を通過する。
甘い香りを纏った女の子を、目で追ってしまう。
女の子の後ろには、数人の男子達が続いていた。
まるで、甘い花の香りに誘われたミツバチのように。
俺もついていきそうになったが、トイレに行く途中だったことを思い出し、急いで向かった。
用を達した後、教室に戻り、さっきのことを友達に話すと、驚きの事実を聞かされる。
「その子は男だぞ」
「えっ」
「女装が趣味で、男共に見られるのが快感らしく、たまに女装して廊下を歩いているそうだ」
「マ、マジかよ」
「ああ、一部の生徒からは歩くスズランと呼ばれている」
「なんでスズランなんだ?」
「スズランは甘い香りがする可愛らしい花だが、毒があるからだ。彼にぴったりだろ?」
「そ、そうだな……」
俺ももう少しで、あの男子達のようになるところだった。
「これからは甘い香りがする女の子には気をつけないとな」
「いや、女じゃなくて男にな?」
でも、あの甘い香りを思い出すと、また会いたいなと思ってしまった。

Next