たーくん。

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2/24/2025, 1:42:46 PM

窓から夕陽が射し込む、放課後の誰もいない教室。
俺は自分の教室で、後輩と待ち合わせをしていた。
掛け時計を見ると、十六時過ぎ。
スマホを取り出し、メッセージを再確認する。
“放課後、教室で待ってて下さい“
わざわざ放課後を選ぶなんて、何の用だろうか?
メッセージでは言えないことなのかもしれない。
直接といっても、彼女は……。
ガラッ。
突然教室のドアが開き、思わずビクッとする。
入ってきたのは、後輩だった。
慌てて両手を後ろにして、何かを隠したみたいだけどなんだろう?
『待たせてしまってごめんなさい』
と、後輩は申し訳なさそうな顔をしている。
「全然待ってないから大丈夫だよ」
そう言うと、後輩は『ありがとう』と笑顔で答えた。
この後輩の女の子は、半年前ぐらいに廊下でいじめられていて、誰も助けようとしないから助けたらすごく感謝され、それから仲良くなって……って感じだ。
『どうしたんですか?』
と、後輩は首を傾げながら俺を見ている。
この子は、喋れないのだ。
何かの病気らしく、声が出せないらしい。
「いや、今日も可愛いなって」
『……!!』
後輩は頬を赤く染めて、目をキョロキョロさせている。
俺は後輩の表情や動きを見て、何を言おうとしているのか予想しながら会話している。
「で、俺に何か用かな?」
『これ……』
後輩は後ろに隠していた物を、前に出した。
両手で持っていたのは、ラッピングされた一本のピンクのバラ。
『い つ も あ り が と う』
後輩は口をゆっくり動かしながら、俺に言った。
「このバラを俺に?」
『うん』
と、後輩は頷く。
「そんな感謝されることしてないけど……あ、ありがと」
なんというか……照れくさい。
だって、俺のためにわざわざ花を買ってきてくれて……。
多分、彼女なりの感謝の気持ちなのだろう。
バラを受け取ると、後輩はバラに負けない満面の笑顔で笑っていた。

2/23/2025, 2:06:32 PM

今の気持ちを表したかのような、どんよりと曇った空。
「はぁ……」
空を見て、思わず溜め息が出る。
テストは赤点だし、彼女に振られるし、バイトでミスして店長に怒られるしで負の連鎖だ。
これからもこんな感じで、良いことないんだろうなぁ。
「はぁ……」
また溜め息が出てしまった。
この曇り空は、俺の溜め息で作られたのかもな……ははは。
「若者が溜め息ばかりじゃいかんぞ」
「おわっ!?」
空から視線を降ろすと、目の前に黒いスーツと黒い帽子を身につけた老人が立っていた。
老人は持っていた杖で、俺のおでこに軽く当てる。
「後ろ向きのことばかり考えていると、自ら良いことから離れていってしまうぞ。前向きに考えて行動すれば、良いことが起きるはずじゃ」
……そうだよな。
後ろ向きのことばかり考えても疲れるだけ。
自ら負を引き寄せて、悪いことばかり起こしてしまいそうだ。
両手で頬を叩き、気合いを入れる。
「うおおお!俺は負けないぞーー!」
両手を挙げて、空に向かって叫んだ。
空の雲が流れていき、太陽が顔を出して一瞬で青空になった。
「ワシの魔法もまだまだ衰えてないようじゃの。若者は元気が一番じゃ。ほっほっほっ」
老人は笑いながら、俺の前から消えた。
まるで最初からいなかったかのように。
……俺は幻覚を見ていたのだろうか?