たーくん。

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今の気持ちを表したかのような、どんよりと曇った空。
「はぁ……」
空を見て、思わず溜め息が出る。
テストは赤点だし、彼女に振られるし、バイトでミスして店長に怒られるしで負の連鎖だ。
これからもこんな感じで、良いことないんだろうなぁ。
「はぁ……」
また溜め息が出てしまった。
この曇り空は、俺の溜め息で作られたのかもな……ははは。
「若者が溜め息ばかりじゃいかんぞ」
「おわっ!?」
空から視線を降ろすと、目の前に黒いスーツと黒い帽子を身につけた老人が立っていた。
老人は持っていた杖で、俺のおでこに軽く当てる。
「後ろ向きのことばかり考えていると、自ら良いことから離れていってしまうぞ。前向きに考えて行動すれば、良いことが起きるはずじゃ」
……そうだよな。
後ろ向きのことばかり考えても疲れるだけ。
自ら負を引き寄せて、悪いことばかり起こしてしまいそうだ。
両手で頬を叩き、気合いを入れる。
「うおおお!俺は負けないぞーー!」
両手を挙げて、空に向かって叫んだ。
空の雲が流れていき、太陽が顔を出して一瞬で青空になった。
「ワシの魔法もまだまだ衰えてないようじゃの。若者は元気が一番じゃ。ほっほっほっ」
老人は笑いながら、俺の前から消えた。
まるで最初からいなかったかのように。
……俺は幻覚を見ていたのだろうか?

2/23/2025, 2:06:32 PM