「1000年先も一緒にいたいなぁ」
「それまでに何回死ぬかな」
君は悲観的だねぇと間延びした声でたしなめられる。あなたが楽観的なだけ、そう言おうとして口を開きかけた。しかし、声の代わりに息が漏れる。
あぁ、もう死ぬのか。
また、あなたを残して死ぬのか。
「今回は今日で終わりか、寂しいね」
そんな表情で、そんな声色で、そんなこと言わないでほしい。
何度経験しても慣れないな
自分は前世の記憶を引き継いで生まれ変わることができる。ずっと昔からという訳ではない。この人がある病を抱えてからだ。
「そろそろ目、閉じたら?眠たいでしょ」
温かい手が目を覆う。
手足が冷たくなっていく気がする。
感覚が麻痺しているのか。
「そういえば君、危篤でも耳だけは機能してるって言ってたよね」
たしか、前世では死ぬ直前まで周囲で遺産相続の話がされていてうんざりしたと愚痴ったことがある。だから、今世ではあなたと2人きりで生きたいと言ったんだ。
「愛してるよ
生まれ変わってまた帰っておいで」
死んでも死なないのは、
不老不死の病を患ってしまったあなたの元に帰ってくるため。
愛するあなたを一生ひとりぼっちにしたくないから。
事切れただろうか
今回は早逝だった
部屋を片づけて、引越しの準備を始める
次はどこで君の帰りを待とうか
〜1000年先も〜
キトンブルーの目をキラキラさせて
甘い声で擦り寄って
キトンキャップを被ったおしゃれなキミ
パヤパヤした毛が柔らかくて
青い可憐な花が咲く頃に生まれて
その花が枯れる頃に儚くなったキミ
忘れないよ
忘れるわけない
また、毛皮を着替えてうちに帰っておいで
〜勿忘草(わすれなぐさ)〜
足を伸ばして、曲げて
自分の力でこいでいく
ユラユラ揺れる
風が心地いい
もっと、もっと
大きく、高く
いっぱいこいだ先では
何が見えるだろう
〜ブランコ〜
この旅路に果てなんてあるのだろうか
もしそんな場所があるのなら、
きっと君に会えるのだろう
そしたら話をしよう
会って、話をするのだ
〜旅路の果てに〜
あなたがこの世からいなくなって半年が経ちました。
不思議な話でね、最近あなたのことを沢山思い出すようになったのよ。
それまでは、ふとした瞬間にあなたを思い出そうとしても忘れてしまっていて、すぐには思い出せなかった。その度に私はあなたを忘れていく自分が怖かった。
おかしいわよね、だって最期のお別れのときに私あなたに「私はきっとこの先、あなたのことを沢山忘れるけれど、その度に沢山思い出して、沢山悲しむから許してね」って約束したのだから、何も悪いことはしていないはずなのに。それなのに忘れる度に罪悪感でおかしくなりそうだった。
ねぇ、もしかして沢山思い出すようになったのはあなたのおかげなのかしら。私が忘れる度に罪悪感で塞ぎこまないように、見かねたあなたが私の心の隙間を埋めてくれたのかしら。
あなたのせいで心に穴が空いたのに。それをあなた自身で埋めるだなんて、皮肉よね。でも、嬉しい。
あなたがこの世からいなくなっても、この世界から消えてしまわないように、もう一生だけここにいていいからね。
〜あなたに届けたい〜