「1000年先も一緒にいたいなぁ」
「それまでに何回死ぬかな」
君は悲観的だねぇと間延びした声でたしなめられる。あなたが楽観的なだけ、そう言おうとして口を開きかけた。しかし、声の代わりに息が漏れる。
あぁ、もう死ぬのか。
また、あなたを残して死ぬのか。
「今回は今日で終わりか、寂しいね」
そんな表情で、そんな声色で、そんなこと言わないでほしい。
何度経験しても慣れないな
自分は前世の記憶を引き継いで生まれ変わることができる。ずっと昔からという訳ではない。この人がある病を抱えてからだ。
「そろそろ目、閉じたら?眠たいでしょ」
温かい手が目を覆う。
手足が冷たくなっていく気がする。
感覚が麻痺しているのか。
「そういえば君、危篤でも耳だけは機能してるって言ってたよね」
たしか、前世では死ぬ直前まで周囲で遺産相続の話がされていてうんざりしたと愚痴ったことがある。だから、今世ではあなたと2人きりで生きたいと言ったんだ。
「愛してるよ
生まれ変わってまた帰っておいで」
死んでも死なないのは、
不老不死の病を患ってしまったあなたの元に帰ってくるため。
愛するあなたを一生ひとりぼっちにしたくないから。
事切れただろうか
今回は早逝だった
部屋を片づけて、引越しの準備を始める
次はどこで君の帰りを待とうか
〜1000年先も〜
2/3/2022, 2:41:08 PM