隠し事の出来ない色。
悪事も好事も全て観られる。
清流の水、監視カメラの硝子。
目の水晶体、スマホの画面。
総ての現象は誰かの目に留まる。
恐ろしくもあり、暖かくもある。
私は普通に生きていきたいと思っていた。
学力普通、思想普通、素行普通、
悪目立ちせず、人気が欲しいわけでもない。
だが、自分の思う「普通」とは、
自分にとっての無難な理想であった。
清く正しく恰好良く。
良くも悪くも、没個性であった。
其の一方で、
自分らしさを出したいと言う欲も有った。
独自性があり、独特な感性の下、
独創的な言動をとる。
そんな理想もあった。
しかし、其等二つは両立し得なかった。
失敗ならば未だ良かった。
捻れてしまいもう治らない。
何となく生きてきた。何不自由なく。
普通の家庭で、普通の人として。
だが、成長するにつれて気付く。
それまでのレンズが割れていく。
明るく柔らかな世界から一変し、暗く鋭い景色ばかりが広がっている。
中学、高校生になれば、熱い友情、甘く切ない初恋、
挙げればきりがない夢のような毎日が待っていると。
しかし、
今日に至るまでそのようなものを手に入れることは
なかった。
唯今日も無為に日々を消化するばかりである。
あゝ、かつての自分よ。
気づけ。動け。覚醒めろ。
お前でも出来る。
私は此れを溢れんばかりに受けていている。
多くは此を十分に享受出来ているか。
いや、意外と貰えない、気付けない者も多い。
此処に気づきを得た。私こそが、と。
だから代わりに愛を叫ぶ。
「 」
あれは小三の時、理科の授業のことだ。
それまで蝶の名前など殆ど知らず、
初めて聞く名前だった。
今まで虫は恐れ嫌う対象でしかなかったが、
その白い羽に目を取られていた。
新しい発見に対する好奇心さえ生まれた。
だが、その心とともに、幼虫の姿を見て興が冷めて
いくのも感じた。
また、キャベツの葉を齧ると聞き、敵意が芽生えて
いくのも感じた。
もっとも、当時は言葉にできなかったが。
今思えば本当に不思議な感覚だなと思う。