椿灯夏

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6/29/2024, 11:15:27 AM

お題《入道雲》



夏疾風の花駆けてゆく。


見上げればターコイズブルーの海に浮かぶ、バニラアイスの島。



蔦に護られた図書館。


人魚姫のいる市民プール。


黄昏時にあらわれる花から浴衣を織る店《蜃気楼》。


神出鬼没の星の名を持つ双子の旅人。




夏の煌めきに触れるのは、《あなた》次第。


6/28/2024, 4:14:35 PM

お題《夏》





陽炎《かげろう》の向こう側、夏の唄を聴く。



蝉時雨が流れる。


蒼い木の葉が儚く紡ぐ旋律。



きりりとした果実の海に、氷の花が揺れる。



空白のノートに思い出を綴って。


6/27/2024, 4:26:26 PM

お題《ここではないどこか》







風花となって美しい季節の旅路を綴りたい。


日常の美しさを知るのなら、世界の美しさを識れ。

6/26/2024, 11:57:07 AM

お題《君と最後に会った日》



紅葉も散り始め、秋は終焉を唄い始める。


季節も不変じゃない。



だからこれは必然。



僕が引き止める術は、ない。




「ねえ」


彼女が歌うように言った。



「美しいだけが世界じゃない。でもね、残酷なだけが世界じゃないよ」



その瞬間すべての音が消えた。


彼女の笑顔が記憶に焦げつくように、傷をつけた。


6/22/2024, 11:45:30 AM

お題《日常》


常春の町。


永遠の春。



桜の花弁が晴れ渡る空を游ぐ。その真下では楽しそうにはしゃぐ花弁を集める子供たち、屋台の花見酒のあまくやわらかい香りがして自然とお腹が減る。


冷蔵庫に向かい開けてみる、きっと何かあるはず……そう思ったが期待はずれだったようだ。


「花弁のジャムも星屑魚のソテーもニナの実サラダもないなんて、うそでしょ……!?」



食事はすべての者の原動力なのに。がっくりと肩を落としどうしようかと思案しかけたところへ、ベランダから重たい音が響く。


慌てて見に行けば――そこにいたのは、南天の実のように赤い髪の、翼をはやした少年だった。耳には羽根の形をした耳飾り。


「おい持ってきてやったぞ、感謝しろ」


偉そうな物言いに少しだけむっとする。


「朱里が連れ去ったんだから、面倒見るのは当然でしょ!」


朱里が持ってきた食べ物に感謝しつつ、言い返してやる。これくらいは、いいだろう。




今夜は朱里の好きなすき焼きにしようと心に決めて。




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