お題《降り止まない雨》
届くはずのない歌は、忘れ去られてゆく運命にあるのか。
雨音に掻き消されて、音の葉になることもない。
なんで、オウサマだって教えてくれなかったの。
なんで、全部ひとりで抱えて勝手に孤独になるんだ。
私は、あなたの何だったの……?
「今度青綴の花を一緒に見に行こう。お前によく似た、強くて美しい花なんだ」
あなたの笑顔は、私に夜明けをくれた。
でもあなたは、ちがったの…………?
お題《恋物語》
夜の底に咲く少女と。
夜の底で月を睨む少年と。
祈りの言の葉を織り続ける少女は、雷鳴轟く夜、紅く濡れる少年に「死を織れ」と冷たく剣を突きつけられる。
少年は沈黙し、少女は誓った。
「ではこうしましょう――わたくしとあなたの死を、織りましょう」
「……正気か? 見知らぬ浅はかな奴と、死をともにするなど」
「ええ。だって知りたいのです、あなたを狂気に走らせる真実を」
「…………はあ。わかった」
これは夜の底で強く煌めく少女と。
悪夢の鳥籠に囚われた少年の、真実への道を織る物語。
お題《真夜中》
泡沫の零れ落ちた時間に巡り会う。
月と星の欠片を宿した淡夢の瞳。
翻した枯れ葉色のコートが風に舞う。
漆黒の空に歌えば、永遠が宿る。
いつか巡り会う君。
いつかまた巡る、悪夢が君を呑み込んでも。
必ず君を救ってみせる。
お題《失われた時間》
儚い痛みと花散らしの雨と。
夕日のように煌々と燃える、我が故郷。
旅人は、始まりの場所から逃げた。
痛みは形を変えて、不変となる。
最後に、落ちた一粒の雫の真意は、もう永遠に理解できないだろう。
お題《一年後》
閉ざされた月茨の森。
蒼白の花弁は月の雫で煌めく。深淵の空には、宝石箱から零れ落ちたような星の欠片。
「必ず戻ってくるから」と。
約束を交わした相手は、もう二度と戻ってこなかった。
梟の歌が孤独を綴る。
呪いを解く歌は遠い昔に枯れ果てて。
もう、終わりにしよう。
一年後月茨の森は――深淵の空の下、月炎で花弁のように灰が散る。
誰も知らない物語。
誰もが忘れてしまった、森の鳥籠の、美しい歌姫がいた遠い遠い幻想の物語。