月下の胡蝶

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5/25/2024, 12:30:39 PM

お題《降り止まない雨》


届くはずのない歌は、忘れ去られてゆく運命にあるのか。



雨音に掻き消されて、音の葉になることもない。



なんで、オウサマだって教えてくれなかったの。


なんで、全部ひとりで抱えて勝手に孤独になるんだ。


私は、あなたの何だったの……?




「今度青綴の花を一緒に見に行こう。お前によく似た、強くて美しい花なんだ」



あなたの笑顔は、私に夜明けをくれた。



でもあなたは、ちがったの…………?


5/18/2024, 11:04:40 AM

お題《恋物語》


夜の底に咲く少女と。


夜の底で月を睨む少年と。



祈りの言の葉を織り続ける少女は、雷鳴轟く夜、紅く濡れる少年に「死を織れ」と冷たく剣を突きつけられる。


少年は沈黙し、少女は誓った。



「ではこうしましょう――わたくしとあなたの死を、織りましょう」


「……正気か? 見知らぬ浅はかな奴と、死をともにするなど」


「ええ。だって知りたいのです、あなたを狂気に走らせる真実を」


「…………はあ。わかった」





これは夜の底で強く煌めく少女と。


悪夢の鳥籠に囚われた少年の、真実への道を織る物語。


5/17/2024, 11:03:59 AM

お題《真夜中》



泡沫の零れ落ちた時間に巡り会う。


月と星の欠片を宿した淡夢の瞳。

翻した枯れ葉色のコートが風に舞う。



漆黒の空に歌えば、永遠が宿る。


いつか巡り会う君。

いつかまた巡る、悪夢が君を呑み込んでも。



必ず君を救ってみせる。


5/13/2024, 12:12:27 PM

お題《失われた時間》



儚い痛みと花散らしの雨と。


夕日のように煌々と燃える、我が故郷。



旅人は、始まりの場所から逃げた。


痛みは形を変えて、不変となる。



最後に、落ちた一粒の雫の真意は、もう永遠に理解できないだろう。


5/9/2024, 5:19:48 AM

お題《一年後》



閉ざされた月茨の森。

蒼白の花弁は月の雫で煌めく。深淵の空には、宝石箱から零れ落ちたような星の欠片。


「必ず戻ってくるから」と。


約束を交わした相手は、もう二度と戻ってこなかった。


梟の歌が孤独を綴る。


呪いを解く歌は遠い昔に枯れ果てて。


もう、終わりにしよう。



一年後月茨の森は――深淵の空の下、月炎で花弁のように灰が散る。



誰も知らない物語。


誰もが忘れてしまった、森の鳥籠の、美しい歌姫がいた遠い遠い幻想の物語。

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