月下の胡蝶

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お題《一年後》



閉ざされた月茨の森。

蒼白の花弁は月の雫で煌めく。深淵の空には、宝石箱から零れ落ちたような星の欠片。


「必ず戻ってくるから」と。


約束を交わした相手は、もう二度と戻ってこなかった。


梟の歌が孤独を綴る。


呪いを解く歌は遠い昔に枯れ果てて。


もう、終わりにしよう。



一年後月茨の森は――深淵の空の下、月炎で花弁のように灰が散る。



誰も知らない物語。


誰もが忘れてしまった、森の鳥籠の、美しい歌姫がいた遠い遠い幻想の物語。

5/9/2024, 5:19:48 AM