椿灯夏

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5/13/2024, 12:12:27 PM

お題《失われた時間》



儚い痛みと花散らしの雨と。


夕日のように煌々と燃える、我が故郷。



旅人は、始まりの場所から逃げた。


痛みは形を変えて、不変となる。



最後に、落ちた一粒の雫の真意は、もう永遠に理解できないだろう。


5/9/2024, 5:19:48 AM

お題《一年後》



閉ざされた月茨の森。

蒼白の花弁は月の雫で煌めく。深淵の空には、宝石箱から零れ落ちたような星の欠片。


「必ず戻ってくるから」と。


約束を交わした相手は、もう二度と戻ってこなかった。


梟の歌が孤独を綴る。


呪いを解く歌は遠い昔に枯れ果てて。


もう、終わりにしよう。



一年後月茨の森は――深淵の空の下、月炎で花弁のように灰が散る。



誰も知らない物語。


誰もが忘れてしまった、森の鳥籠の、美しい歌姫がいた遠い遠い幻想の物語。

5/4/2024, 10:33:58 AM

お題《耳を澄ますと》




本の紡ぐ記憶を紐解くと――歌が舞う。



流れてゆく星。


星追う、竜の群。


星の冠を授かる青年王。


草を編む香花の民。


花降る流星の夜――歌は始まりを紬ぎだす。


泡沫と永遠を。




これは愛おしいあなたへと贈る、物語。


5/2/2024, 12:41:15 PM

お題《優しくないで》




あなたの優しさは光にはならないから。



孤独と毒がじわじわ身体全体を彩ってゆく。



あなたの《すき》は、わたしとはちがう。



なのに、あなたは鈍感。


ねえ希望にすらないのなら、いっそ絶望の海をみせてよ。



深淵の森を彷徨うわたしは、あなたのランプにはならない光で溺れてゆく。


4/28/2024, 11:15:16 AM

お題《刹那》



あなたの命は儚い。


だから《刹那》よ。



俺は、妖精と人から紡がれた、命。



――それでも前を向いて生きて。


どうかあなたの旅路に幸あらんことを。



彼女の涙と抱きしめられたぬくもりは、永遠に忘れることはないだろう。



確かに愛されて、生まれてきた証なのだから。

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