椿灯夏

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6/13/2023, 11:46:27 AM

お題《あじさい》



灰空で気持ちが沈む通学路。


坂道の端に植えられた紫陽花。


想えば想うほど。


泣けば泣くほど。



あなたの消えたあの朝を。


あなたと約束したあの刹那を。



後悔しない日はない――六月の罪と呼ばれた、あの悪夢を。




「紫陽花なんてダイキライ」


「あの日の罪が沈むことはない」


「…………おれはもう、いないんだよ」




六月の罪を。


六月の罪が。



変えてしまったんだ、世界のことわりを。


6/11/2023, 11:05:08 AM

お題《街》


空白のスケッチブックに街を描いた。



少女の。少女だけの――空想の街。



孤独な少女が手に入れた、唯一の希望だった。



旅人のお兄ちゃんがくれた、彩が宿る不思議なスケッチブックだ。その他にも不思議なものをたくさん見せてくれた。星を淹れたティーポット、枯れた植物が元気になる水、歌う妖精ドーム、お茶会をひらいてくれるブリキのおもちゃ。






少女が手に入れたのは、生きてゆくための光と大切なきずな。



6/5/2023, 1:34:56 PM

お題《誰にも言えない秘密》




深海の底に沈めた歴史。



永遠に水底で、眠っていてほしい。




6/3/2023, 3:02:41 PM

お題《失恋》



好きじゃなかった。


だから失恋じゃない、失ったわけじゃない。



それでも桜の花が散るように、零れてしまう。



あなたの声とよく合う、いちごみるくみたいな彼女の笑い声。

廊下は淡く色づいて。

 


教室の片隅で震える肩。





好きじゃ、なかった。




6/1/2023, 1:16:49 PM

お題《梅雨》


窓の外を彩る深い青の紫陽花。


しとしと降る雨音。


気怠い身体。


起き上がる気力もなく、ベッドに身を沈める。



傍らに緑茶の湯気揺らぐ。



あと――時間したらごはんを作って、洗濯機を回して。



恋人がプレゼントしてくれた、レモンキャンデーをご褒美に食べよう。




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