椿灯夏

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6/1/2023, 1:16:49 PM

お題《梅雨》


窓の外を彩る深い青の紫陽花。


しとしと降る雨音。


気怠い身体。


起き上がる気力もなく、ベッドに身を沈める。



傍らに緑茶の湯気揺らぐ。



あと――時間したらごはんを作って、洗濯機を回して。



恋人がプレゼントしてくれた、レモンキャンデーをご褒美に食べよう。




5/29/2023, 11:02:08 AM

お題「ごめんね」



隠し通せぬ嘘。


一度言の葉となった嘘は、解けて、失くなってはくれない。



「兄なんかいない方がいいよ」



友達と馬鹿笑いしながら通話で放った言葉。


この時知らなかったんだ。――扉の向こう側で、泣いていたあなたがいた事を。あの日、あの時。声なき声の涙に気づいてたなら、何か変わったんだろうか。



「ごめんね」と一言だけ書かれたメモ。


兄の部屋に向かった母の泣き叫ぶ悲鳴が、私に“罪人”という刃を突きつける。



壊れた母の壊れた叫び。


それを必死になだめる父。




――神様。私の一言はそんなに“悪”だったんでしょうか? 


夢ならサメテ………。


5/28/2023, 3:16:21 PM

お題《半袖》


晴れ渡る空。


向日葵畑の中手を引いてくれる彼。


そよ風で揺れる花の海。


おろしたての白いシャツの彼がまぶしくて、目を細める。



アイスクリームのキッチンカーの話をしたら向日葵に負けないくらい、輝く笑顔はじける夏の記憶。


ラムネ瓶の硝子玉のようだ。


5/26/2023, 11:16:50 AM

お題《月に願いを》



想い零れる音がする。



泡沫となって散ってしまう花のような想いを、すくいだしてくれた。



叶わずともいい。


この声《ことば》をすくってくれるのなら。



きっとまた、歩いてゆけるから。


5/25/2023, 11:46:47 AM

お題《いつまでも降り止まない、雨》



アパートの一部屋。


薬缶の沸騰する音。


机に置かれたカップラーメン。


食べる気もしない。でも。もうごはんを作ってくれるあなたは隣にはいない――渇いた部屋で過ごす休日、今日も部屋の中は雨。



「オムライスとサラダできたよ」




あなたの笑顔で、できていたんだと思い知らされる雨の日。


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