月下の胡蝶

Open App

お題「ごめんね」



隠し通せぬ嘘。


一度言の葉となった嘘は、解けて、失くなってはくれない。



「兄なんかいない方がいいよ」



友達と馬鹿笑いしながら通話で放った言葉。


この時知らなかったんだ。――扉の向こう側で、泣いていたあなたがいた事を。あの日、あの時。声なき声の涙に気づいてたなら、何か変わったんだろうか。



「ごめんね」と一言だけ書かれたメモ。


兄の部屋に向かった母の泣き叫ぶ悲鳴が、私に“罪人”という刃を突きつける。



壊れた母の壊れた叫び。


それを必死になだめる父。




――神様。私の一言はそんなに“悪”だったんでしょうか? 


夢ならサメテ………。


5/29/2023, 11:02:08 AM