テーマ“声が枯れるまで”
声が枯れるまで
泣いた事も
声が枯れるまで
笑った事も
声が枯れるまで
怒った事も
声が枯れるまで
叫んだ事も無い。
感情が乏しいと
嘲笑われた。
けれど
そんなに感情の起伏が激しい人の方が
普通では無いと
気が付かないのだろうか。
テーマ“始まりはいつも”
朝、スマホのアラームで目覚める。
ピピピピ…という無機質な音。
アラームを止め
伸びをして、二度寝をしたいと思う。
アラームが鳴ったのだから
別に時間を確認しなくても
目覚める時間で間違いはないのだけれど
壁に飾ってある
モノクロの壁掛時計を見上げる。
本日も1分の遅れもなく目覚める。
洗面所に向かい、手を洗い
口を濯いでから、トイレに行って
用を足す。
再び手を洗ってから
トースターにトーストを入れ
いつもと同じ時間だけ焼く
ポットに水を入れ(すぐ沸くポット)
その日の気分のフレーバーティーを選ぶ。
2〜30種類ほど常備してある。
レモンティーやアップルティーのような
ありきたりなフレーバーティーから
コーヒーのフレーバーティーと言った
変わり種まで。
フレーバーティーと言っても
紅茶だけでは無く、緑茶や麦茶、ルイボス…
様々な種類の茶葉が揃っている。
パンが焼きあがるまでに、選んで
カップにティーバッグを入れ
お湯が沸いたら注ぎ入れる。
パンが焼けたら、パンを食べながら
フレーバーティーを飲みつつ
天気予報を確認してから、着替えて
歯磨きや洗顔し、髪を整えて
昨日のうちに用意してあったカバンを手に
外に出る。
毎日、始まりはいつも、変わらない。
生真面目とかではなく
変えると気持ち悪くなる。
つまりは、気持ちの問題。
テーマ“すれ違い”
社会人になり、学生時代の友人たちと
疎遠になった。
皆が皆、土日祝休みってわけでは無いし
職種により、働く時間も異なる。
会おうねなんて言っても簡単に会えるわけではないと
そう思っていた。
仕事が終わり、ふと
街中を歩いていると
私を除いた、所謂いつメンだった人達と
すれ違った。
一瞬気不味そうな表情を浮かべたけれど
何もなかったかのように
彼女達は私の横を通り過ぎて行った。
例え、断るだろうと思っていても
誘ってほしかった。
誘う事すらせずに、ハブられていた事実を知り
挨拶さえされず
ああ、そうか
彼女たちにとって私は別に
【いつメン】でも何でも無かったのだと
ようやく気が付いた。
その後、弁明をするようなメッセージも何も届かなかったのが
きっと、つまりは、そういう事なのだろう。
彼女達のグループメッセージに
【ありがとう】とだけ残して
私はそのグループを抜けた。
彼女たちの連絡先を消して
そのグループメッセージのアプリも消した。
きっと、誰もそのグループメッセージは
既読しなかっただろうと予測する。
社会人になってから
ズレが生じたのではなく
元々、何も合って居なかったのだと
ようやく気がつけた。
あの日、すれ違わなければ
永遠に気がつけなかった。
私の勘違い、気付かせてくれて
ありがとう。
そして、永遠にさようなら。
貴女達と、すれ違っても
二度と話し掛けないし、話し掛けないでください。
ーBADENDー
テーマ“秋晴れ”
いつもより
ほんの少しだけ早く目覚めた私は
軽く着替えて
外に出て、背伸びをする。
すうーっと鼻から息を吸うと
数日前までは、
まだ残暑が厳しかったとは思えないほど
冷たい空気が入ってくる。
思わず、涙目になり
上を見上げると
空は高く青く澄んでいる。
空はキレイなのに
此処はこんなにも寒い。
腕をさすりながら
家の中へと戻る。
そろそろ、こたつ出そうかな。
そんな事を考え始める。
秋は短し、北国の季節。
テーマ“忘れたくても忘れられない”
今でも、夢に見る。
あの日を。
あの日、あの時間、あの場所に
私が一緒に居られたのなら
救う事が出来たかも知れない
そう思うと未だに、後悔する。
いつの間にか
あの日から年月が経過し
11年と7ヶ月も過ぎていた。
大地震、津波、そして火事…
家を失くし、家族を亡くし、街が消えた
幾ら復興しても
戻って来ない人達
戻って来ない物
消えた思い出
後悔しか残っていないのに
何故私は…今、此処で生きているんだろう。