心だけ、逃避行」
「ここに一本のカレースプーンがあります」
「その心は、」
「もう一つ、人徳でツテから用意してもらったサンドペーパーがあります。」
「人徳ないと支払えないの?」
「あれば仁徳の墓でも構わないですよ」
「ちょっと手に余るかな」
「じゃあ置き場のいらない手頃なエピソードの積み重ねで得た人徳で」
「余りある懐の深さが要りそうですね」
「そこは努力かな」
「結局そこなんだ」
「御時世をなんだと思ってるんですか民衆は米すら買えずに喘いで34度の熱に赤らむ顔をスマホで扇ぎながらTwitterする時代ですよ!」
「団扇でいいんじゃないですか」
「金と米が底を尽き出したら団扇のツイートで噂話を分け合うより他娯楽がないんです」
「米がなくても娯楽なんだ」
「人間これ遊びが一生、そして最後に用意するのが美人のポスター」
「あ、なんか既視感…」
「あとはこの、カレースプーンを貴方に渡しますから、誰にも見つからずにひたすら排水管まで穴を掘り続けて下さい。」
「うんこ塗れになるヤツでしょう?それはちょっとしんどいかなって、」
「私は先に次元の裂け目を跨いでホテルでゆっくり動画観てますんで、無事出たら海の見える向こう側までやって来てください。」
「待って役割が、」
「しんどい役だけあなたに任せます、頑張ってね強い子シンドバッド」
(変換間違いで生まれた死んだバターが周囲を黄色い液体で満たす頃、エメラルドとスカイブルーをオリーブ油で割ったようなチャプチャプとした海が記憶の層で揺らめきます。女優のポスターは肩幅の狭い桃井かおりがシャフ度で気怠げに『見ているだけ』)
届いて…
私が一所懸命書いた請求書、届いたよネ…?
ね…?
ね…?
あの日の景色」
エンジンをかける瞬間は無機的で構わない、
重心の移動から脚が先行する。
足裏が重心の移動を補償すれば、後は宙に身体を乗り出して虚空に預ける。
途切れる間も無く次の脚は滑らかに…ポンプを使って無理やりに押し出せば良い。
最初の駆動は物理的な運動であり、先行投資であり、成果の是非を問わない無償のエネルギーの供与である。<祈り>とも呼ばれる。
それを数度繰り返すうちに慣性がグリースになって幾分か運動を滑らかにする。
それを繰り返し続ける。
<祈り>と、時に呼ばれることもある。
エネルギーの燃焼、発散、回転するエンジン。自らがエンジンの一部であることを意識しながら
やがて意識すら透明になる頃に
精神の駆動は既に始まっている
もしそうでないならば、それは「そうでない」ということに過ぎないのだ。
蹲り眼を閉じて休み憩い、虚数を溜め続ける。
若しも君の指が動くと感じる時が来たならば
踏み出す時は常に肉体の駆動であることを覚えていれば、次のカードを繰るのは容易い。
崖の先に身を乗り出すことに躊躇いはないか?
足裏を信用しろ。
願い事
温暖化対策と戦争の停止の両方の、速やかな実行ですかねえ。
波音に耳を澄ませて」
傾く船と
シーツの衣擦れ
蝸牛の過ちが
吐き出す泡
1.2.3.for you